月輪エンゲージ【最終話】 ページ48
「少しだけ、手伝わせてね」
墓前で掻いた土へ刺した、小刀。先代が記憶に玄樹は手をかざす。天界人の象徴は失われ、魔王の加護を受けていても感覚は残っている。それは本来、植物に与える大地の祝福だった。
「土に還って、未来に芽吹いて」
その横顔を、レンは目を細め見詰めている。
「さっき、な。やっと分かった気がしてん」
先代の魂が、剣となりその身を貫いていた時重なって見えた姿は。過去か、未来か。いずれ今の自分達と繋がり、影響し合う存在なのだ。
「それが、どう転ぶかは分からんけど。そこの世界、時代でも根っこは一緒や思うねん。もし会えてたら、俺はお前を大事にするやろしな」
「なに、急に。どうしたの？」
「だいぶ前、兄貴の話したやろ？この人が魔界へ来る時にはぐれた赤子。結局、分からんまま亡くなってしもて。今も見つかってない。魔王の力を持ってしても……無理やねん」
つまり、少なくとも魔界には存在しない。
「ショウの母親は、天界と魔界が充分やり取りして行き来した。お前は召還に応えて、魔界に来た。それぐらい手順を踏まなアカンことや。界渡りがどんだけ普通やないか、分かるやろ」
玄樹は頷いた。
「まして、いつの時代どこの世界で生きてるか分からん相手を探すなんて……果たされへん約束でしかない。せやから、親父は考えたんや」
それがいつ、どこであっても。無事を祈り、案じる心が異界へも根を張るように。その存在へ届き、良い方向へ転じ影響すると願って。
「それだけ、大事に想ってらしたんだね」
土に溶け込んでゆく小刀を前に、一方の手は下腹に添えられ他方は夜空へ伸びて。
「あ、見て。ちょうど、これと真逆だよ」
促され、振り仰いだ月は闇の色を濃くして。
誓いの夜、人の世に倣って指へ授けた闇を反転させているかのようだった。
「……ホンマやなあ」
レンは言い、風で乱れる玄樹の髪を撫でる。
「あの月は、ここにおる俺らだけのもんやないから。誓おう。お前の中で眠ってる、無限に。それを教えてくれた魂が目覚める未来、今日の話を受け継いだ意味を、聞かせられるように」
「なら、あれは空に浮かぶ契約の印だね」
そっと、自分達を引き合わせた咬み傷へと。それが転化した何処かへ、想いを馳せながら。
寄せた唇から零れる想いは、月輪の元で永遠になった。
Fin.
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
