月輪エンゲージ�� ページ47
暮れ時の居城へ、２人は戻ってきた。正しくは遺された記憶を尊ぶ為に。
「……ただいま」
母の墓前で、レンは言う。代弁であった。
「えらい、遅なったけど」
膝をつき、庭を掻く。魔力を使えば容易いと知っていて、敢えて土にまみれるのは愚かだと多くは言うのだろう。けれど、玄樹は違った。
「……ここに還って、また生まれるんだね」
「せやな。魔王やのうて、親父が眠る場所や」
数時間前、闇が薄らいだ広間で。いち早く、意識を取り戻したカイトの母親は状況を察して言ったものだ。実に彼女らしい、高慢さで。
「礼は言わぬぞ、人の子よ」
一方、こうも続けた。
「とは申せ、一時代を終わらせる力はあるな。それに見合うものなら、認めてやっても良い」
「ならば、先代の骸の扱いを委ねるに異論は」
ショウが問いかけると、カイトを見上げて。
「そなたが良いなら、妾も賛同しようぞ」
と、遠回しではあるが反発しなかった。
「そうだね、レンがどうしたいか聞かせてよ」
「魔族に葬儀の概念が薄いのは、分かっとる。けど、先代は異界も含めての安定を望んでた。結局、それが魔界にも影響するからや。天界、人界それぞれ根を張る城は既にある。つまり」
「カイトの城があれば、魔界にも根を張れる」
ショウが言い、カイトも頷く。
「実は、先代の居城を受け継ぐのもどうかなと思ってたんだよね。だから新たな城へ移るのは悪くない。ただ、それだとここが廃墟になる」
「なあ、カイト。さっきの半永久にできるか」
倒れていた側近達を指差して言う。鼓動こそ戻してあるが、しばし時を止めていた為かまだ意識はない。それが、黙って控えているカイトの従者と異なる点である。
「さっきのって時間を止めてた、アレかな？」
「そうや。骸はそのまま玉座に据えて、城ごと封じたい。魔界の安定を委ねた、先代の気持ちを大事に遺したいねん。そんなんできるのは、俺らの中ではお前だけや。頼めるか？」
先代の居城ごととは、時代を遺すと同義だ。それはつまり、カイトの能力を魔界に示し名を刻むことでもある。名家としても否やはない。
「ホント、レンって……」
肩を竦め、カイトは頷く。かくして、魔王としての体を遺したまま。先代の魂は眠り、ただ一人の男の記憶は愛した者の傍らへ戻ってきたのだった。
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
