月輪エンゲージ�� ページ39
カイトの成人の儀は、先代王の玉座前と定められていた。先に成人した２人の兄は城を構え魔王となっていたが、末弟は庇護を必要とするという名目のもと居城がなかったからである。
多くの魔族は、それを建前だと捉えていた。即ち、やはり先代は生粋のカイトを後継者にと考えているのだろうと。自身の居城と玉座を、カイトにこそ譲ろうとしているのだと。
「浅慮の極みに他なりませぬ」
傍らに付き従い、登城した仮面の男は言う。
「長子であるショウ様こそ、ご出自からしても才覚からしても後継であらせられますものを」
「いずれ、確たるものなくしての話だ」
魔界では、この儀を境に混沌が広がると考えられている。ショウとカイト、それぞれを支持する魔族の争いが激化するだろうと。けれど。
「カイト」
儀式の主役である異母弟は、広間前にいた。どうやら、自分やレンを迎えるつもりらしい。
だが、その母親や従者の姿はない。
「大した側近達だな。今日が何の日か知らない訳でもあるまいに、己が主を一人にするとは」
「まあね。自分達の支度のが忙しいんでしょ」
もっとも、カイトの一族は他者を卑下しがちなので避けるのが互いに賢明ではあるのだが。
「ところで……あの、烏は」
言いかけたショウに、カイトは笑う。
「やっぱり、分かっちゃった？」
「無駄に永らえず、土に還してやれ」
目的は分からなくもない。だが、屍はそれに見合う扱いをして然るべきだとショウは言う。
「理由は、それだけ？」
「何が言いたい？」
「ちょっとね、今日の為に試しておきたくて」
血溜まりの効力が、どこまで及ぶのかを。
「命あるものには血脈を感じる。骸にはそれがない。だからこそ、この瞳の色に意味がある」
「ふうん……なるほどね」
その赤は、だからこそ【血、溜まり】だと。
「火、闇、風……この３つを揃えた父上の思惑」
呟いたカイトを、仮面の男は訝しげに見る。
だが、ショウは敢えて説明をしなかった。彼にすれば契約を交わした主、自分に仕えることが全てだからだ。
「さて……影の主役はどんな余興を用意しているかな。今日はじっくり、楽しませてもらうよ」
末弟、成人の儀における真の目的。それは。
闇の中から生まれ出ずるのだと、自分達の他にどれほどの者が承知していることだろうか。
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
