月輪エンゲージ�� ページ40
天界の最高位は、神殿にある。つまりは神官長が魔界の王と同等に当たるのだが、華美ではない。これはレンの城にも言えることで、玄樹は訪れた先代王の城内に戸惑っていた。
「……すごい、ね」
「ショウの城も大概ちゃうんか？」
「あの時は、内装どころじゃなかったし」
かつて、仮面の男に連れられて訪れたショウの居城には骸と見紛う無数の従者がいて。装飾などより、よほど印象が強かったのである。
「妙な臭いがすると思えば人の子ではないか」
背後より、刺々しい声がする。振り返るまでもないが、無視を決め込む訳にもいかずレンは立ち止まり、応じた。
「今日の善き日に参列をと使いが参りまして」
「ふむ、半分とは言え先代王の血であったな」
さも、今更気付いたかのように言い捨てて。
「連れておるのは、婬魔か。貧相な羽根じゃが何か儀式の合間に余興でもさせる所存かえ？」
「……邪魔なんだけど」
と、更に背後から声がした。カイトである。
「儀式前に立ち話？参列する気がないなら別に良いけど、ぶち壊すなら部屋に戻っててよね」
「何を言うのです。正式な魔王引き継ぎの場に母である妾が不在など、あってはなりませぬ」
「あっそ。じゃ、さっさと行くよ」
カイトは軽く目配せし、母親と従者を連れて広間に入って行った。レンは緊張で握り締めていた玄樹の手を、そっとほどく。
「誰にでも、ああいう人やねん。気にしなや」
「……うん」
妙な臭い、というのは僅かに残る天界の気配なのだろう。だが、レンに対しても【人の子】と揶揄するあたり選民意識が高いのも確かだ。
「レン様、そろそろ」
促され、足を踏み入れた広間の中。正面には先代の玉座。中央に杯台。向かって左にショウと従者、右にカイト達がいる。即ち、レン達は入口近くの下座で控えることとなる。
「……いよいよかぁ」
先代王の側近達が準備する、杯。成人の儀は形式的な部分が大きいが、やはり例外もある。それが、今用意されている血の杯だった。
先に成人したショウは、先代王の血滴を口にした。だが、翌年レンに用意されていた杯には血滴がなかった。たとえばそれが悪辣な仕打ちであったら。手違いであったら。レンは、今日をこれほど陰鬱な気持ちで迎えはしなかった。
空の杯に満たされていた、覚悟。それを飲み干した瞬間から。今日の舞台は用意されていたのだから。
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
