第３話 ページ4
壊死した羽根は、天界の白だったのか。魔界の黒だったのか。いずれにせよ、この咬み傷と無関係ではないのだろう。けれど、今は。
「そのうち、いろいろ聞かせてな?」
召喚者とは言え、初対面の相手には話しにくいこともあるだろう。そう、思ったのに。
「レン様」
控え目に、声がかかる。
「部屋を用意させました。それとも、このままお愉しみになりますか？」
玉座の間でないこともあってか、老いた側近の言葉もどこか砕けている。
「……あのな。お前には、俺が名前も聞かん相手にサカるほど節操なしに見えるんか」
「捉え方ですが、魔族は己に忠実ですので」
それは間違いではない。欲しいものは奪う、気に入らなければ潰す。気紛れで、時に残酷な振る舞いを躊躇わない。多くの魔族は、多かれ少なかれ、そうした常識の範疇で生きている。
「悪いな、非常識で」
「ならば、客人は別室にご案内致しましょう」
「あ、の……玄樹、です」
細い声が、背後から聞こえた。魔界のそれと違う響きから、天界の名前だと伺い知れる。
「俺は、レンでええからね」
身に付けていたマントを外し、肩にかけて。
「俺の気配があったらザコは寄り付かんから。これ、持って行き」
「……でも」
「黙って受け取ることです、お客人」
にこりともせず、側近は言う。
「こういう所はお父上譲りですので」
事実、良く似たやり取りを若き日の彼は見ていた。多くの魔族にとって、人間は退屈しのぎの代物でしかなく。放置すれば、遠からず屈辱の末に命を落としたであろう者を執着の名目で保護した、先代の魔王は。血溜まりの瞳に怯まぬ人間……後にレンの母親となった女に何かしら可能性を見たのかもしれない。そして、今も。
「参りましょうか」
慌てて後を追う玄樹を見送って。
「……まさか、な」
低位の魔族ならば取り込まれたであろう瞳。不完全とは言え、双眼に現れたのは契約した者が潜在的な力を秘めていたと考えるのが自然。ましてや、元の姿を作り替えるほどとなれば。
「そんなはず、ない……そんなはず、ないんや」
言い聞かせるように、レンは可能性を打ち消した。巷で囁かれている、魔界分断の可能性。それを牽制する為の召喚だったのに。それが、逆に火種を呼び込むきっかけになるとしたら。
「そんな、アホな話」
あっていいはずは、なかった。
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
