第２０話 ページ21
ショウとの出会いにより、天界人として生を全うできなくなって。しばらくの間は、変貌に伴う苦痛と戦ってきた。けれど、それを通して彼の母親と関わり、多くを知れたのも事実で。
「完全な変貌でなくても」
それが全てではない、と感じていたから。
「羽根がなくても、心は自由に翔べるんだよ」
深い赤を見つめながら、玄樹は言った。
「守ろうとしてくれて、ありがとう。でもね、完全な姿になりたくないんじゃなくて。ただ、あの日のことも、今日までもムダじゃなくて。全部、意味のあることなんだって伝えたくて」
「……そうか」
首筋に残る、傷。その過去に上書きしても、玄樹の中に新たな何かは生まれないのだろう。
「時間は戻せない。界渡りも相互の均衡がないなら難しい。できるとすれば、空間を歪ませることくらいだな……ただ、それもアイツ次第だ」
「アイツ、って」
「戻りたいんだろう？レンの所に」
「……でも」
表情の消えた、面差しを思い出してしまう。
「お前が呼びかけても戻れないなら。俺が契約して、魔王も惑わすサキュバスにしてやるよ」
「魔王も、って」
笑みを含んだ言葉尻に浮かんだのは、どちらの魔王だったのか。気付かない振りで続ける。
「その時は……」
自ら魂を喰わせ、孕ませてやる。どこまでも独り占めするために。残酷な魔族の純粋さで。
「その時は？」
「いや」
きっとレンは応える。応えないはずがない。
「長くは無理だからな」
それは、魔力の限界ではなくて。
「喚べよ。心の底から」
三界の均衡だとか、先代の意向だとか、統治の為だとか。後付けで何とでもなる言い訳などさせないくらい。余計なものをかなぐり捨て、一人の男にさせるほどに。
「……ありがとう。戻れる、って信じるね」
異空間の檻が揺らぐ。捕らえておくつもりの存在はすり抜けて。過去の断罪だけを封じて。
「いつか、どこかで」
ゆらゆら、と消え入るように遠ざかりつつ。
「また、会える気がするよ」
玄樹は言った。それがどんな世界の、どんな形かも知れないのに。幸せな出会いだなんて、限らないのに……たとえ、そうだとしても。
「いつか、会おうな」
ここではない、どこかで。手の中から零れる大切なものに。ただ願わずにいられなかった。
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
