Ⅲ.秘密の７人目【東海オンエア】 (ページ5)

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「その前からだよ。」
「え？」
「幼稚園のときから、Aはしばゆーしか見てなかったじゃん。」

ワインで何もかも流させやしない。動きを止めた彼女を見つめたまま、言葉を続ける。

「てつやが、怒った理由、俺はよくわかるよ。
Aだって図星だったから怒ったんでしょ。」

噛みしめられた唇は、ボルドー色をすっかり消すほど白い。無言でステムを掴んで、残った液体を飲み干したAは、眉をひそめた。

「そう…
私はいっつもいっつも、祐輔だ。
祐輔が１番だった。ううん、1番だよ。」

じんわりと浮かんだ涙を見られるのが嫌なAはマスカラが落ちるのも気にせずに思い切り目元を拭った。

手の甲についた黒ずみを見て自嘲するように笑って、次に自分を見た彼女は、下手くそな笑みを向けた。

「明日は、休み？」
「っ、そ、仕事だよ。」
「、そう。」

何を言いたいのかそんなことくらいわかる。見つめられるのはしばゆーに敵わないだろうけど、彼女を見つめてきたのは自分だって長い。

況してやアイツも知らないような顔を自分は知っている。あの歪な笑みが何を意味するのかも。

空のグラスを傾けて、今度こそ虚空を見つめるAに自分ができることなんて何もないことも。