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あいつ、頭おかしい。
Aと別れた帰り道、頭の中はそればかりだった。
『行くところないならわざわざ外で会わなくてもいいだろ。暑いし』
あんなこじつけでまかり通るなんて……。
いや、嬉しいけど、やっぱり危機管理が心配だ。
色々な話を聞きたい。もっと仲良くなりたい。
つまり、Aに近付いたという決定的な一打が欲しくて部屋を提案した。
俺の部屋でもよかったけどアラと、特にルリが邪魔して碌に話もできない未来が見えたから、Aの部屋がいいと言った。
それにホテルの一室なら私生活が見られるわけでもないから了承してくれる確率が高そうだったし。
俺の企み通りになったはずなのに、まるで自分に言い聞かせているみたいだ。
……Aに近付いたという決定的な一打が欲しい?
そうか、これは嘘だ。情けなく自分に嘘をついた。
だから良心が抉られる思いをしてるんだ。
よりプライベートな話を聞こうだとか、友達以上の関係になりたいだとか、俺は青臭い子供か。
はっきり言おう。
普段の倍以上の酒を飲んで、お互い判断力が失われるほど酔い潰れて、そのまま流れに身を任せたい。
朝までキスをして身体を寄せ合っていたい。
全部俺のものだって分からせたい。
「はあっ……、はぁ、はぁっ……」
こんな浅ましい自分が恥ずかしくて、逃げるように俺の家に向かって走り出していた。
いくら逃げようと離れようとしても無意味なのに、俺は何をやっているんだ。
明日、酒を飲み過ぎないことを徹底するか。
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Ayaka(プロフ) - 初めまして。とても素敵な作品をありがとうございます。構成や感情表現が綺麗で、読んでいく度に惹き込まれます。先の展開が凄く気になって楽しみです!お身体に無理をされず、しりお様のペースで書いて頂ければと思います。これからも応援しています! (2022年3月22日 19時) (レス) id: 11c194713d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しりお | 作成日時:2022年3月10日 19時