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これまでの人生で体験したことのない嫌悪感が体中を駆け巡る。
胃の中で巨大なムカデが暴れているような、手足にナメクジが這っているような、顔の上でゴキブリが遊んでいるような、耳元でハエが集っているような……とにもかくにも気持ち悪い。
どうにも言葉にしづらい拒絶反応に、俺はえずく。そして両膝を地面に付け、その場にうずくまった。
こうなった原因について思い当たる節が一つだけある。
しかし俺は決して認めたくなかった。それに、これさえ耐えれば勝利の二文字が俺達を優しく包んでくれるのだ、どうして諦めるなんて愚行を冒せようか。
だが耐えても耐えてもこの辛さが引くことはなく、俺はついに吐いてしまった。
食べ物を含んだ胃液がとめどなく口から出る。綺麗な緑が俺の吐瀉物で汚れていくのを、涙で滲んだ視界でぼんやりと眺めていた。
俺は我慢ならず、ついに真依さんを手放した。苦渋の決断だが、こうするしか楽になる方法はない。
影は彼女を無理に追い出した。途端に気分が良くなり、俺の吐き気は瞬く間に引いた。同時にありとあらゆる虫が体中にくっ付いているような感覚も消え去った。
俺が吐き終えるのと虎杖が来たのは、ほぼ同じ時分である。虎杖は地面に散らばっている不快感の塊を見て、すぐに駆け寄ってくれた。
「大丈夫? 立てるか?」
「あ、あぁ……悪い、俺、もう……」
「いいって。無理すんなよ」
虎杖に支えられながらよろよろと立ち上がる。
虎杖は真希さんに「伏黒と戻るね。事情説明は真希さんに頼んでいい?」というような会話をいくつか交し、俺のペースに合わせて歩き始めた。
時折「平気?」や「また吐いてもいいからな」と優しい言葉をかけながら。
俺は先の出来事がショックで言葉も発せなかった。ただ黙って頷き、ぶり返す嘔気を我慢するのみであった。
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作者名:しりお | 作成日時:2021年11月27日 20時