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「真依さん!」そう叫んだ。場所がバレたって構わない。この際、勝ち負けよりも真依さんに会うことが先決だ。
俺の言葉が、あるいは想いが伝わったのか、応答として銃声が返ってきた。
音がしてきた方を向き、また走り出す。疲れ切っていて体は鉛のように重たいが、彼女の儚い笑顔を思い浮かべて自分の体に鞭を打つ。
あの銃声は間違いなく真依さんのものだ。ということは残りの弾数はたった一発のみ。やむを得ず撃ったのならば相当ピンチなはずだ。
『いえ、使わず勝ちましょう』
自分が発した言葉を脳内で反芻する。
真依さんをこれ以上苦しめたくない。もう二度と失敗作のレッテルを貼らせたくないのだ。
最後の銃声が森に響いた。木々で体を休めていた鳥は一斉にどこかへ飛び去っていった。
音が先よりもずっとずっと近くなっていることを感じ、俺は更に速度を上げた。この後ぶっ倒れたって気にしない心持ちで真依さんを連れ戻しに走る。
「真依さん!」
何度も呼んだこの名前。これほど悲痛に叫んだことがあるだろうか。
ようやっと俺が真依さんを見つけた時には、彼女は捨て身で真希さんに飛びかかっていた。
俺が、まず真希さんを取ると言ったことを忠実に遂行しようとしているのだ。
俺はその彼女のために影を広げた。これだけが勝つための最善策だ。
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作者名:しりお | 作成日時:2021年11月27日 20時