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震える指で真っ白な紙を慎重に開ける。
逸る気持ちを抑えて、徐々にずらしていくと、禪院の二文字が見えて、手が止まった。
__姉か妹か。
俺が望むのは姉の真希さんだ。頭の中で何度も何度も真希さんを呼ぶ。この時だけは全く知らない神に向かって祈りを捧げた。
禪院真、まで見えた。あと一文字が重要だと分かっているのに進めない。この紙を開き終えた時、俺の未来が確定することが、末恐ろしくなったのだ。
中身を知らぬまま今日を終了させたい気分と葛藤し、停滞した指に力を入れて覚悟を決める。
「あ、真希さん、俺とペアだ」
最も希望しなかった名前をこの目でしかと見たのと、隣から喜びを含んだ絶望の声が襲ってきたのは、完璧に同じタイミングであった。
とどのつまり俺がどれほど もがこうと、端からこの紙には禪院真依の四文字が書かれてあったのだ。
これは幻覚だと、そうに違いないと目を大きく開いて名前を見つめるが、当然変化しない。
悪魔が俺を嘲弄している。俺が祈念した幸運の女神を殺害し、次は俺の首をも狙っているのだ。
悪魔の嗜虐心はこんなものでは止まらず、対戦相手すら一存で決められてしまう。
ペアが真依さんになり、そして対戦相手は虎杖と真希さんのチームになった。泣きっ面に蜂とはまさにこのことであろう。
二年生で且つ天与呪縛持ちの真希さんに加えて、ナチュラルボーン鬼神の虎杖が相手となると、勝てる見込みはあまりない。真依さんとペアならば零に等しいだろう。
唯一、俺を救うものはルールのみであった。
今回の訓練は決して対呪術師というわけではない。運が良ければ、または上手く立ち回れば、対人戦を回避することができる。
なぜなら本来の目的は、より早く目標の呪霊を祓除したチームの勝利となるからだ。鉢合わせになった場合、両陣営には戦闘か逃亡かの二択が与えられる。
……おそらく俺達の相手は迷わず戦闘をとるだろうから、なんとかして逃げ切る方法を考えなければならない。
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作者名:しりお | 作成日時:2021年11月27日 20時