ひとりじゃないから ページ39
「A?」
いきなり呼びかけられてドキリとする。リビングのドアを見ると、光が仕事から帰って来たのだろう。
サングラスにマスク姿で立っていた。
「あ、光気づかなくてごめんねお帰りなさい」
「大丈夫か?なんか落ち込んでるみたいに見えるけど…」
気持ちが顔に出ていたのだろう、そこまで言われてしまえば隠すことなど今の私にはできなかった。
光が向かいの椅子に腰掛け、私のことを心配そうに見ている。
「いや、大したことじゃないんだけどね…次の仕事探しがあんまりうまく行ってなくて…」
「でもAはまだ辞めてからそんなに経ってないだろ?」
「うん、すぐに見つかるとは私も思ってないんだけどさ…」
「うん」
「今日の面談で私と同じ年代の女性は結婚とかの時期だから正社員の仕事探しは大変かもしれないって」
「あー…」
確かに、と納得しつつも少し苦い顔をして光はうつむく。
素直にしゃべってしまったが、多忙な光に心配をかけたくないのも本音だった。
「ごめんね、こんな話しちゃってちょっと落ち込んでるだけだから…」
「A、俺に迷惑かけるとか思ってるんだったら、それは心配することじゃないからな」
「え…」
まるで私の心を見透かしたように光が言う。それに驚いてつい声が出てしまった。
「俺は幼馴染のAを助けたいから、こうやって一緒に住んでるし、それが原因でAに負担を負わせたくないからさ」
「でも…」
「しかも、家事とかAは他にもやることあんのにしてくれてるじゃん?家事してるからって理由だけじゃないけどそこは気にしないでほしい」
Aの兄貴分でもある俺に任せときな!と言ってくれる光に涙腺が緩む。
「…ありがと」
「おい、A…?泣いてる、おい泣くなよ!ティッシュティッシュ!!」
泣くと言っても少し涙が溢れてしまっただけなのに、光は慌てた様子でボックスティッシュを探し私にボックスごと渡す。
「ちょっと力が抜けちゃっただけだよ…光ありがとね、光がこうやって側にいてくれてよかった」
「俺なんかで良ければいつでもお供しま〜す!」
「ふふっ…」
横にした手を額に当てて少しふざけた光をみて、やっと私は少し心の底から笑えたのだった
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シリカ(プロフ) - きゃんさん» ありがとうございます…!遅筆ですがしっかり完結させたいと思っております…!今後もがんばります! (2019年8月25日 20時) (レス) id: 715e177fed (このIDを非表示/違反報告)
きゃん(プロフ) - 更新待っていました!お忙しいとは思いますが、頑張ってください!楽しみにしています。 (2019年8月25日 5時) (レス) id: 68aae87022 (このIDを非表示/違反報告)
シリカ(プロフ) - もなさん» そう言っていただけてとっても嬉しいです!これからもがんばります…! (2019年7月9日 20時) (レス) id: 715e177fed (このIDを非表示/違反報告)
もな - シリカさんの文章 とても読みやすくて面白くて大好きです……!ゆっくりと更新を楽しみにしております (2019年7月9日 2時) (レス) id: 23768f9cf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シリカ | 作成日時:2019年6月21日 15時