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29、月夜に溶ける彼女 ページ32

日がすっかり暮れた祭りは

爆音が響き、大混乱になっていた。


そんな中、他とは違い、ゆっくりとした歩調で誰もいない神社を歩く男が一人。


高杉晋助。



高杉は、この騒ぎから自らの船へ帰る途中だった。

ふと、古い神社の屋根を見上げると、思わず息を飲んでしまった。


先程まで居なかった者が、月を背に佇んでいた。



白い犬神と、桜の刺繍があり、足の付け根まで大きく切り込みの入った着物に、狐に似た龍の面をした女。



間違いない。彼女だ。


目を離すことなく、かすれる声で彼女を呼ぶ。




高杉「白夜」



彼女は静かに俺を見つめている。
あのときから時が止まったように、彼女は全く変わっていないように見えた。





高杉「おめぇ…生きてたのか。」





何も言わない。





高杉「面を…外してくれねぇか。」


彼女は静かに面を取った。
ああ、と思わず声が出る。



彼女は何も変わっていなかった。

月明かりを纏ったような鮮血の色をした瞳も

瞳に被って桜のような白く長い睫毛も

光のような銀の長い髪も

月夜に溶けそうで、何処か力強い

そんな悲しいくらい儚くて美しい


何も、変わらないままの彼女が




知っていた。

うすうす気付いていた。

彼女だけ、時が止まってしまうことは。



貴「この騒ぎは、晋助がやったのか。」

透き通った声が響く。


高杉「俺は、俺達から先生を奪ったこの世界を許せねぇ。全て壊してぇ。





オメェもそうだろ。白夜」





長い沈黙が続き、不意に彼女は言葉を紡ぐ。





貴「復讐は復讐を生み出し、やがて大きな争いを生む。そして争いは、私たちから全てを奪った
  闘いを生む。獣たちは争いを望まない。松陽も、望まなかった。」


一呼吸置いて、彼女はまた話し出す。



貴「それに...たとえ敗者として、泥を這いつくばって生きなくてはいけなくても、
  私は生きる。生きて、生き延びてやる。松陽の約束を、山の者を守るために。」




高杉「.……。」


こいつは、つまりこっち側ではない。
こいつはもう、獣なのだ。


貴「何故、争う。それは他者から奪うことになるというのに。」



高杉「それでもいい。俺は、もうこの世界に意味は無ぇ。」


すると彼女は涙を音もなく、顔を歪める事なく溢した。


貴「私の事も意味がないのか、兄弟。」

あ、不味い。あれは、最後に俺と別れた時の目だ。
そう思ったときは遅かった。急に眠気が襲い、眠りに落ちてしまう。



目が覚めると、そこは俺の船の前だった。

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設定タグ:銀魂 , 万事屋 , 真撰組   
作品ジャンル:恋愛
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白い玉(プロフ) - 瑠李さん» 報告ありがとうございます!訂正します! (2018年2月19日 1時) (レス) id: b06dc51979 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - 34話の主人公が言った言葉が私の価値じゃなくって勝ちですよ。 (2018年2月19日 1時) (レス) id: d8c6f7f40c (このIDを非表示/違反報告)
白い玉(プロフ) - * *花菜**さん» おい笑 生きろー笑 (2017年12月31日 3時) (レス) id: b06dc51979 (このIDを非表示/違反報告)
* *花菜**(プロフ) - だめだ、鎮くんにやられた… (2017年12月31日 0時) (レス) id: 71d0a5c15e (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - リクエストで主人公の昔の仲間が鎮が主人公の子だって知った他ときの反応がある作品が読んで見たいです説明が下手ならすみませんこれからも体調にきおつけて更新頑張って下さい応援します (2017年12月30日 16時) (レス) id: 9bec705c08 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白い玉 | 作成日時:2017年8月24日 23時

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