六通 ページ6
何十名もの兵士がオスマンの周りを囲みながら歩く。
これから我々国の外交官、オスマンはα国へ外交へ行く。
大きく豪華な馬車に乗ると馬車はゆっくりと動き出した。
オスマンの両隣に兵士が二人、後ろに三人、前に三人と前後の馬車に十数名。当たり前の事ながら厳重に警戒されている。
馬の蹄が音を鳴らす。
空には一点の曇りも無く、天候には恵まれたようだ。
最初は道も綺麗に舗装されほとんど揺れは無かったが、段々と砂利道になってきて今は体が勝手に動く程に揺れている。
オスマンは素早く脳内の「改善点」のメモに【道の舗装】と書き込んだ。
出発してから暫くは無表情だった彼も段々と笑みが浮かび上がってくる。勿論作り笑いだが。
彼の仮面は既に出来上がっているようだった。
馬車で五時間ほど走った先にα国はある。
とある国とα国の国境を越えた瞬間、目に入ったのは大きな旗だった。
風に靡く赤、白、金で彩られた大きな旗。
広いスペースに旗が一つ立ててある謎の光景に、オスマンは思わず声を洩らした。
『なんやこれ……』
『おや、オスマン外交官殿、何か在りましたか？』
馬車を操っていた初老の男が馬車を止め、オスマンの方を振り返る。
『あの旗は……何のために？一体誰が考案したんです？』
不思議そうに眉を顰め旗の方を見るオスマン。
それを見て、初老の男は優しく微笑んだ。
『ああ、あの国旗ですか。毎回ここに来られる方が不思議そうに見ていますよ。実はこの国の国旗は国民から募集をしているんですよ。そして国民投票をし、決定されたものをここに立てているのです。そうすることで国民の団結力が高まる、と国王陛下が。』
『……はぁ。随分と頭の柔らかい国王ですねぇ。』
彼らでは考えられないような柔軟な考えに、オスマンは驚愕し、感嘆した。
国旗の案を国民から募集し、更に決定するのも国民とは、と。
『この国は常に国民中心。国の今後の方針を決めるのも、新しい幹部を誰にするのかも、国旗を決めるのも、国王だって何年かに一度国民投票をしています。頭の固い我々には出てこないような案を次々と出していくので、我々はいつも感嘆していますよ。本当に国王陛下は素晴らしいお方です。』
成程、あの戦争大好きおじさんとは大違いだ。……とは勿論口に出さない。
初老の男には引かれるし総統には殺されるしで大惨事になってしまう。
オスマンはその考えをぎゅっと握り潰し、目の前に立つこじんまりとした城を見上げた。
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