二通 ページ2
その言葉を聞いて、グルッペンは眉の皺を更に深くする。
『王女？王女が俺に何の用だ。』
封を開けるグルッペン。
中には封筒と同じ、白の便箋が入っていた。
【先日はパーティの御参加、有難う御座います。
軍事力の乏しい我々と条約を結んでくださること、非常に光栄です。
おっと、私が話したいのはこんな事ではありません。
遠回しに言うのは面倒ですので、単刀直入に言わせていただきます。
私、グルッペン様に惚れました。
ですので、この手紙は所謂恋文、という物でしょうか。
シャンデリアを反射するその金の髪に、飲み込まれてしまいそうなその紅の瞳に、貴方の全てに。
まだ貴方の事を何も知らない私から言う事ではないということは重々承知しております。
しかし、私は貴方の事を知りたくなってしまったのです。
お返事を戴ければ幸いです。
α国第一王女 A・ヴァルジール
グルッペン・フューラー様】
読み終わると、グルッペンは一息つき、ケーキを口に入れた。
便箋を再び折りたたみ、封筒に入れて机の中に入れた。
そんなグルッペンを見て二コルはあら、と声を洩らす。
『捨てないんですね。珍しい。』
二コルの言葉に、グルッペンは深く溜息を吐いた。
『何故お前はすぐラブレターとわかるんだ。』
二コルは優しく微笑む。
『何年一緒にいると思ってるんですか。』
『フッ、そうだな。』
グルッペンは口角を少しばかり上げ、またケーキを頬張った。
ケーキを美味しそうに頬張るグルッペンを見つめる二コルの笑顔は何故か、何処か悲しそうで。
『あ、二コルちゃん。調子どぉ？』
総統室から出てきた二コルに手を振り、にへら、と笑った一人の男。
紺色のスーツには皺が寄り、口には煙草が銜えられている。
『ああ、鬱様。いつも通りやってますよ。』
煙草を銜える鬱に微笑む二コル。
『もー、最近グルちゃんとばっかり話しとるやん。僕とも話そうや？』
少し顔をずらし、二コルにかからぬように口から煙を吐く。
『相変わらずの女たらしで。』
呆れたように深く溜息を吐き、軽く鬱を睨んだ二コルはくるっと踵を返し、コツコツと足音を立てて赤いカーペットの敷かれた階段の方へと歩いて行く。
鬱は目にかかった藍色の長い前髪をかき上げ、深い溜息を吐いた。
『なーんでここまで相手にしてくれんかなぁ。』
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