156episode 誰 ページ14
米屋side
なあお前なんの話をしてんの。誰の話をしてんの。昔ってなんだよ。ボーダー入る前は何してたんだよ。なんで迅さんとあんなに仲良いわけ? 太刀川さんと病院抜け出して何してたんだよ。最近秀次となんかあった?
聞きたいことはたくさんあるのに、それは全部喉の奥につっかえる。
「どうすればって、お前がしたいようにすればいいだろ?」
そう笑って言ってみるけどさすがに視線は外した。
「……それができないから言ってるんじゃん」
「あーお前素直じゃねーからな」
オレの言葉にそいつはちらりとオレを見て、それからまたシーツに視線を戻した。
「………米屋はさ、嫌われるのが怖くて言いたいことが言えないときとかあんの?」
そいつのその言葉にオレはそいつに視線を戻して、数秒間を置いてから、少し自虐的に笑った。
「まああるな、つーかしょっちゅう」
瀬野が少しだけ驚いたようにこっちを見たから、ぱちっと目が合う。珍しくオレから逸らした。
「なんつーか、その方がオレも、相手も傷つかねーしって、弱気なこと考えていっつも言えねーんだよな」
「……意外…」
何が意外だよ。瀬野の言葉に心の中で笑う。
「……やっぱ謝った方がいいのかなー……」
ぽつりとそいつが呟く。
「さあな、お前がその相手とどーなりたいかによるんじゃねーの」
「……『どうなりたいか』……」
「そ。いい関係になりたいなら、謝るなり素直に伝えるなりすればいーし、そのままの関係でいいなら……今のままなんもしなくていいんじゃねーの」
言いながら完全なブーメンランだと思った。ああ何やってんだろなオレ。オレは、……どうなりたいんだろうな。
瀬野はじっと考え込んでいて、きっとその視界にオレなんか入ってなくて。
「……きつ」
ぽつりと小さく呟いたら瀬野が顔を上げた。
「なに?」
「なんでも」
「ふーん……」
そう言ってまた考え込むように視線を落としたその横顔。
『嫌われるのが怖くて』。さっきのその言葉は、誰のことを言ってんだろ。城戸司令のお気に入りなんて揶揄されててもなんともないように振舞ってきたお前に、そんな風に思わせる相手は誰?
オレはじっとその横顔を見つめる。お前、なんにも、気づかねーのな。
「…………なあ、」
オレの声に瀬野がこっちを向いた。
「オレお前のことすきだって言ったら、……どうする?」
157episode なんで→←155episode 上手くいかない
1040人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆう - とっても面白いです!!更新頑張ってください!! (2023年1月29日 15時) (レス) @page17 id: 619c9e8827 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音 - すごい素敵です…更新ずーっと待ちます! (2022年3月6日 22時) (レス) @page17 id: 57ecee7250 (このIDを非表示/違反報告)
誕生日肉 - 米屋への対応と三輪とのこれからが気になります… (2021年5月31日 13時) (レス) id: 43784786f9 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 良すぎて言葉になりません。 更新楽しみにしています。 応援してます。 (2019年12月5日 20時) (レス) id: 52a662140b (このIDを非表示/違反報告)
柚さん - 面白くって最初から一気読みしてしまいました!続きまってます!無理なさらずがんばってください!! (2018年11月26日 23時) (レス) id: d92082f045 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:瀬野 | 作成日時:2015年7月19日 21時