構いたくなる変な奴

優しさ ページ10

中也side

『先に帰って』死を確認した後、彼奴は俺を横目に言った。


今回は殲滅だけの筈だ。
先に帰る、というのは可笑しい。


「何をする気だ？」

『別に何も。只少し休んで行くだけ。』


心なしか、ふらふらと足元がおぼつかない様子。

「…肩、貸すぜ？」

『いらない。

…君ね、何を勘違いしてるか知らないけど。
私アンタの事嫌いだからね』
彼奴の目は容赦なく俺を睨みつける。


「なら何が好きなんだよ」

『……全部大嫌いだ』
確固とした口調で断言された"嫌い”。


『視界にも入れたく無いから。さっさと消えて』



言うだけ言うとAは俺から視線を外し、内庭の方へと歩いて行った。





…………全部大嫌い、なんて言うには。その表情は。

少し悲しみに満ち過ぎていた。


何をしているのか、それだけを見る心算で建物の屋上から下を眺めた。
だから、こんなのを見る心算はなかった。




誰も思わない筈だ。
今さっき、大勢を殺した奴が…



自分が殺した、1人1人に花を手向けているなんて。

部下を亡くしても、Aは顔色ひとつ、表情筋ひとつすら動かさない自分勝手野郎だと…有名だった筈だ。






全員に花を置き終えると彼奴は暫く、ぼんやりと近くに立っていた。

何をするでも無く、只静かに。


満足したのか下手な指鳴らしで折角供えた花を風化させると森の中に戻っていった。






その日から俺は彼奴の事が気になり始めた。

エリス嬢をさりげなく道路から遠ざけたり、野良猫に引っ掻かれて笑っていたり、小さい事から。

ビル内に入り込んだ尺取り虫を一時間掛けて外に誘導したり、それが団子虫だったり、としょうもない優しさまで。
………虫嫌いの癖に…。




気にすれば気にするだけ、優しい部分が顔を出す。


如何して冷徹な幹部候補、なんて渾名が付いたのか疑問な位に穏やかなA。

部下や人間が嫌いなら首領にも姐さんにも、…糞太宰にも、あんな顔はしねぇ筈だ。



それに、彼奴は俺に対する態度が軟化してこない。

どんだけ嫌いなんだよ。とため息がつきたくなる位だ。




「おい太宰、」俺は迷った末、太宰に声をかけた。

「何だい中也、私を呼び止めて置いて下らない用だったら許さないよ。今の3倍の嫌がらせを仕掛けるからね」

「…五月蝿ェよ、聞きてェ事がある」

「何だい、早く言い給え」



____「手前は如何やって、Aに気に入られた？」

差→←実力．２

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