したごころ。2 ページ9
ふわっとした。
その一瞬の内に私が掴んでいた椅子は右手から離れ
私は幹部に寄りかかっていた。
『なっ…』
私の顔に軽く触れ、床に落ちて行く帽子がやけにスローモーションで。
「……ハッ、引き剥がされた気分は如何だよ」
いやらしくも、耳に透る声と其処から覗き込まれる瞳。
「ははっ…やっぱり、手前は顔に出やすいなァ」
『……何処が出ていると言いたいのですか』
目を離すと負け。目を離すと負け。
そう自分に言い聞かせて私も負けじと真顔を貫く。
「そりゃもう全部?出てやがるぞ?」
私はピクリ、と眉を曲げる。
『私の表情は一朝一夕で読み取れる物じゃ有りませんし。私もそれを自負しています。あまり調子に乗らないで下さい』
「……なるほどなァ…?ま、今は良いぜ。手前はさっさと休め」
『…ッ気になる言い方をしますね。言って下さい』
「さァて如何しようかなァ…」
『言って下さい。幹部であろうとその席奪いますよ』
ピタッ…
そんな音が付きそうな程綺麗に止まり。その後の沈黙。
そして私は後悔した。
今や顔色は真っ青になっている事だろう。
やっば。
人って焦りを通り越すと其れしか出ないんだなと心底思う。
頭を急回転させて失言を取り消す方法を考える。
拙い拙い。
恐怖で打開策が出てこない。
「…言っておくがなァ……俺は実力でこの席を取っ……?!!
てっめえ!!顔色!!」
ありがとう顔色。
感謝してもし足りない位に私は幹部の怒りを吹っ飛ばした自分の顔色に感謝した。
「悪かったな!立たせて!!座れ!!」
『ええ…どうも』
私顔色極めようかな。
「…ったく…何の話か忘れたじゃねェか」
ガシガシと自分の首を搔く幹部にほっと息をつく。
「手前病弱なんだな…」
まるで道端に落ちてしまった溶け切らないアイスに向ける視線を私に向けて来る。
全く病弱なんかでは無いし。
『……風邪を引きやすい程度です。勘違いしないで下さい』
「でも風邪拗らせて肺炎になりかけてたって……うおっ」
私は幹部の肩を掴んだ。
いきなりの事にたじろぐ幹部。
『待って?何処まで聞いてるんですか?』
「は…?!否そんな事より座れって…!」
『私からしたら黒歴史なんです!!教えて下さい!!』
「………3年置きに溶連菌にかかってるッて処まで。」
『あ゙あ゙あ゙あ゙!!!』
「は!?わ、悪い!!そんな黒歴史だったとは…!!」
しゃがみ込んだまま暫くいた。
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暁月臨(プロフ) - はわわわわわわわわわわわわ、、、、、!!好き過ぎます、、、!l更新頑張ってください!!! (7月15日 3時) (レス) @page26 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - 駄作上手さん» 謝らないでください!図々しくてごめんなさい!他の投稿も頑張って下さい! (6月11日 20時) (レス) @page26 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
駄作上手(プロフ) - 落蕾さん» 返信遅れてすみません。申し訳ありませんが、今は他に書きかけも書きたいものもあるのですぐに出す予定はありません…ごめんなさい (6月11日 8時) (レス) id: eb19c5f4a9 (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - めっちゃコメントしてごめんなさい。続編出しませんか?めちゃくちゃ読みたいです (6月5日 23時) (レス) @page26 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - メルヘンワード、ツボに入った (6月5日 23時) (レス) @page21 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:駄作上手 | 作成日時:2023年1月22日 17時