旅行。6 ページ26
此処まで勝利に歓喜したことはなかった気がする。
手を解放してもらってから私は声をかける。
『異能解除しますよ。』
「おう。」
其れで話が終わったかのように思われた。
「…あー…やっぱ待て。」
『はい?』私は指を鳴らそうとした手を止める。
突然、幹部の顔が見えなくなった。
幹部の体重が私に全て掛かっている。
耳元でする呼吸音が右耳の神経を掻き立てる。
「手前が好きだ。困らせたいんじゃねぇ…でも、伝えないと居られねぇ位に……
手前が俺の頭の中を支配してんだよ。
サインには手前の名前書きそうになるし、タイプミスも増えた。本部の中ではどうしても手前の姿を探して、会いに行けば手前を困らせる。
解ってんだ。手前には迷惑この上ない話だって事…」
弱い姿を、初めて見せられた。
見ていられなかった。
あんなにも格好良い人が、恋という病に此れだけ弱まってしまう物なのか。
だから口が滑ったんだ。
『別に、迷惑じゃあ無いです。』
「…手前、毎回俺を面倒くさそうに、」
『其れは、あんたが直ぐに距離を詰めてくるからですよ。気持ちの整理…させて貰れば、付き合うか否か位決められるか、と思いますが。如何です?』
「良いのか?俺、あんま待てねェ…」
『私今日っていうか今出すだなんて言ってないので、先ず離れて下さい。』
翌日。
私は朝起きて、書類片手に幹部を揺すり起こした。
『幹部、一度しか言いません。極秘事項を伝えさせて頂きます。』
「嗚呼。任務だな。」
『構いませんよ。』
「?何がだ?任務だろ?」
寝ぼけているであろう青い瞳が此方を薄く開いて見る。
…
…
…
「まさか、」
大きく見開かれた目と、起き上がって来た身体。
『ええ、多分その真逆です。』
「つ、付き合ってくれんのか?」
『二度は言いません。二度と言いません。』
昨日よりも強い力で押し倒された。
その姿はさながら大型犬。小さいが。
「……嬉しいぜ、Aと付き合えるなんて…。夢見てる気分だ。」
『そうですか…』
「こら。」
『痛ッ!?』林檎を割りそうなデコピンが飛んで来た。
「もう手前は俺の恋人なんだ。敬語。」
『…可愛く言ってくれたら抜きましょうか』
「寂しいから、抜いてくれ。」ぐりっと頬に押し付けられた幹部の頬は熱くて緊張が伝わってくる。
『百万点です。』
「手ン前…あんま煽んなよ。」
朝から甘いキスが降ることになった。
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暁月臨(プロフ) - はわわわわわわわわわわわわ、、、、、!!好き過ぎます、、、!l更新頑張ってください!!! (7月15日 3時) (レス) @page26 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - 駄作上手さん» 謝らないでください!図々しくてごめんなさい!他の投稿も頑張って下さい! (6月11日 20時) (レス) @page26 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
駄作上手(プロフ) - 落蕾さん» 返信遅れてすみません。申し訳ありませんが、今は他に書きかけも書きたいものもあるのですぐに出す予定はありません…ごめんなさい (6月11日 8時) (レス) id: eb19c5f4a9 (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - めっちゃコメントしてごめんなさい。続編出しませんか?めちゃくちゃ読みたいです (6月5日 23時) (レス) @page26 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - メルヘンワード、ツボに入った (6月5日 23時) (レス) @page21 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:駄作上手 | 作成日時:2023年1月22日 17時