中原中也の構わせ方。

旅行。5 ページ25

中也side


空いている手で帯に手を掛けた時だ。
A以外の物がモノクロに変わった。


！？

「…動くな、敵襲か。」

囁くように声を落として周囲を警戒しながら言った。
『否……私ですね。』




「………は？」
『ほら、私の異能って発動時に触れている人や物も時間の此方側にきてしまうじゃないですか。』

やっちまった。そう言いたげに目を逸らしている。
「だから俺もこっちに来ちまったってか？」

『ええ…。そうなるかと……。』



まぁ、好都合か？
俺は言った。
何がです？
Aは首を傾げた。


こんな状況だというのに。




Aside

其れから幹部の言ったことは私を焦せらせるに充分に足る威力を持っていた。


手前の喘ぎ声を聞かれずに済む。



『…っ幹部！！』
私が声を荒げても、私の手首を片手で拘束する幹部の力は緩むことを知らない。


『か、考えてください。私は今、幹部が嫌いなわけではないんです。なのにあんたが私に無理矢理手を出せば…私はあんたの手が届かない警察側に寝返りますよ。』


「…ねぇよ。」

『……は…？』
「手前はそんな事しねぇ。断言してやるよ。」

『何故。』



「手前は俺の事が大好きだからな。」


幹部の言葉には確固たる意志が感じられた。
だが其れだけではない。


ばれてる。

心音が跳ね上がり、自分の心臓の場所がわかる。
わかってしまうんだ。

「気付かねぇとでも思ったかよ、散々人の顔見つめやがって。そのくせ俺が顔を向ければ何も無かったように逸らしやがんだ。」



「…選べよ、これから俺を男として意識すんなら…今日は見逃してやる。」
「そうじゃねぇなら今抱く。」そう、幹部は続けた。


『…、意味が解りません。』
「あ？」
『意識して、何が変わると言うのですか。』


「……ふぅん、手前の言い分は解ったよ。自分の経験はないからどうすりゃ良いか解らねぇってことだろ？こう考えりゃァ良い。」

今手酷く犯 されるか、後で愛されるか。選べ。


『えっ、今は愛されて無いんですか？』
「はっ！？否俺は愛してっけど、この愛すってのは優しく抱かれるかって…意味なんだが…」
恥ずかしくなってきたのか、幹部の声が小さくなっていく。


『…そうですか。ちなみに質問を。』
「…んだよ。」

『もう酔い冷めて来てません？』

『引くなら今ですよ。何も無かったことにするんで。』図星の様に黙った幹部にたたみかけた。



「……頼めるか…？」
『解りました。』

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