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『別にッ……』


頬をとらえていた太宰の手を払いながら、
私の口から出てきたのは、素っ気ない言葉だけだった。




「少なくとも 私にはそう見えないけどねェ」


『……煩い、眠たいから早くあっち行って』




あんなに『行かないで』と云っていたくせに。
本人様の目の前だと、本心とは違う言葉が飛び出てしまう。


後から後悔が襲ってくるとも知らないで。



………払った太宰の手が、涙で濡れた。




「嗚呼、そう」


ギシッと軋んだ音を立てて
ベッドサイドから立ち去ろうとする太宰。









嘘に決まってる。



眠たいなんて。



“あっち行って”なんて。



『待って』と伸ばした手が また虚しく宙を切る……かと思われた。








「はァ……全く、呆れた子だ」



クルッと此方を向いた太宰に手首を掴まれ、
瞬きもしないうちに私の体は“太宰の腕の中”






「行かないでって云っていたのは 何処の誰だっけ?」



『ふふ...さぁ、誰だろうね』





そんなに嬉しいそうにしながら云われても 説得力ないよ?
と私の頭を撫でる太宰に、ギュッと抱きつく。




『本当にいなくならないでね?』




その時、私は忘れていたんだ。

私達を取り囲む“事実”の存在を。




空間が少しずつ冷たくなっていく。

ゆっくりと、太宰の手が止まった。







「でも………私は君の長を殺した者なのだよ……?」







「それでも、私の傍に居ると云うのかい?」









___そんなの当たり前でしょう?

そう、いとも簡単に云えるようになったのは何時からだろうか。




そう探っているうちに、たどり着いた先は過去の記憶。







『私の異能は、人や物を隠す能力だからね』






『私を、本当の意味で“最初に見つけた”のは太宰なんだよ』






答えは多分、出会ったときからなんだろうなぁ。

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二つ結びの人(プロフ) - こんばんは。すっごく面白いです!!!!!!応援してます!!! (2018年11月20日 22時) (レス) id: 97c5c84046 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はたゆり@苺のシリアル。 | 作成日時:2018年8月19日 19時

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