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第64話:追いつけ、追い越せ ページ29

第64話

「おーおー、影山くんは今日も今日とてAとのメールタイムですか?
もう少しで春高特集はじまるぞ。」

「……はい、」

菅さんに声をかけられ、携帯に落としていた目を上げた。
宿舎の広間に集まり、ポツンとある小さなテレビを皆が食い入るように見つめている。
そこから少し離れた位置に座り、1人携帯を弄っていた俺は、とりあえずテレビへと視線を移した。
テレビに映るかもしれないのは気にならないわけではなかったが、それよりも気がかりなことがあった。

稲荷崎に勝ったあと、応援席前に整列した時、Aは確かに最前列で拍手をしていた。
でもその表情は少し険しく、頭を下げ終わって顔を上げた時には、もう居なくなっていた。
よほど急いでその場から離れたのだろうと思ったのと同時に、その時の表情に俺は見覚えがあった。
選手に戻るよう説得したあの日、Aは目に涙を浮かべながら俺に抗議した。あの時の表情に、よく似ていた。
すぐに居なくなってしまったのはチームの都合かもしれないが、どうしても違和感が拭えない。
その違和感を裏付けるように、試合後にいつものように送ったメールに対する返事が未だに来ていないことが気がかりだった。

「……チッ」

軽く舌打ちをして再度携帯に目をやる。
こんなことをメソメソと考えている自分に苛立ちを感じた。
別になんてことは無い。新山女子も今日から試合なんだ。きっと忙しいんだろう。そんなことはわかってるくせに、何をこんなに考えなきゃならねぇんだ。
メール画面を開き、「この後会えるか」と乱暴に打って送信する。携帯を尻ポケットに押し込み、うじうじした自分を振り払うように腕を組んでテレビを睨みつけた。


「だー!クソッ!!」

「うわっ、なんだよ急に!脅かすなよな!!」

だが、テレビを見終わっても、飯を食い終わっても、Aからの返事はなかった。
また俺はなんかしちまったのか。いやでも、試合途中に応援席で見かけた時は普通だったし、俺になにか理由があるとは思えない。
悶々とバレー以外のことを長時間考え続けた俺は、容量オーバーで爆発した。
隣で風呂に行くために鞄を漁っていた日向が飛び上がって驚き、胸に手を当てて俺に抗議する。
あと30分もすれば、全員が風呂に入り終わるだろう。
そんな日向は無視をして、再度携帯を開いた。
まさか、何かあった訳じゃねぇだろうな。倒れたとか、事故とか。
緊急連絡先は親だろうし、それならここまで連絡がないことも頷ける。

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設定タグ:HQ , 影山飛雄 , ハイキュー   
作品ジャンル:恋愛
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しおり(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!ネタ考えます🤔 (2022年11月30日 8時) (レス) id: 0e2f0640dd (このIDを非表示/違反報告)
りん - マジで面白いです!いつも楽しみの更新待ってます (2022年11月27日 20時) (レス) id: e34fa82e55 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しおり | 作者ホームページ:http://nanos.jp/amakusa40/  
作成日時:2022年10月10日 21時

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