群青のヒロイン (ページ29)

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29.訊かなければよかったページ29

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井上瑞稀side

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「夏休み、どっか行く予定とか立てた？」

「うーん、私はずっとバイトかなぁ」

自販機の前で偶然鉢合わせたAにジュースを奢らされ、そのまま二人で教室へと足を運んでいた。

「バイト以外することないの？」

「そういう瑞稀だってバスケばっかじゃん」

「まぁそうだね」

飲みかけのジュースのペットボトルに口をつけ、なんとも言えない表情をしたA。

…まただ。

Aはいつもちゃらんぽらんな態度ばかり見せるくせに、たまにこういう表情を見せる。

そしてそれは決まって、俺がバスケの話をしたときだ。

「…Aさぁ」

「うん？」

ずっと訊こうと思っていたけれど、なかなか口にできなかった些細な疑問。

「バスケ嫌い？」

「へ？なんで？別に嫌いじゃないよー」

あっけらかんとした解答に思わずぽかんとしてしまう。

Aは「まぁ特別好きってわけでもないけどさ」なんて笑いながら前を歩く。

あまりにもいつも通りなAに、俺は何も考えずに次の質問をした。

「じゃあなんで俺がバスケの話したらつまんねー顔すんの？」

この質問が、きっとAの核心に触れたのかもしれない。

みるみるうちに笑顔が消えていく。

Aの返事を待とうと思ったが、静かに地面に視線を泳がせるだけで言葉を放つ気配を見せない。

…訊かなければよかった。

そんな顔させたいわけじゃなくて、俺は――――…

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「Aちゃん？」