恋はやがて泡になる。【灰谷蘭】 (ページ7)

今日:7 hit、昨日:5 hit、合計:39,573 hit

07.この俺がページ7

.

蘭「…やっぱ駅前のイルミはこんなもんか。」

もう少し綺麗な所に連れて行ってやりたかったが、急遽決まったため近場のイルミネーションで退屈を凌いだ。

けれど、俺の隣の女は目をキラキラして飽きもせずにキョロキョロとあたりを見渡す。

『…すごい、キレー』

蘭「コラ、迷子になるぞ」

フラフラと歩いて行ってしまう秋吉の手を咄嗟に繋ぐ。

そのとき俺はハッとする。

そういえば、自分から女と手を繋ぐなんて考えてみれば初めての経験だ。

どこかに連れて行ってやりたいと思ったのも、落としたいと思ったのも

…秋吉が初めてだ。

『せんぱいっ！あそこのキラキラしてるとこ、行きたい!』

蘭「…おう。」

変なの。

世間知らずで田舎者で、誰かがついてやんなきゃ何もできなさそうな女。

まんま俺が今まで嫌いな女のタイプだったハズ。

チラリと隣の秋吉に視線をやると、未だ目を輝かせてニコニコしている。

蘭「次はもっと綺麗なイルミネーション連れて行ってやる。多分来月くらいになればスポット増えるだろ。」

『え、いいんですか！』

蘭「それまでにPASMO買っとこうな～」

『灰谷先輩って、何でも知ってますね』

蘭「…らーん」

『へ？』

蘭「蘭な。”先輩”も”さん”もいらねー。」

これほど自分から女に歩み寄るのは初めてだ。

まったく、どこまで手を焼かせるんだこの女。俺にここまでのことさせておいてまだオチねーのかよ。

『えと…じゃあ、蘭くん。』

秋吉は、心底恥ずかしそうに蚊の鳴くような声でそう呟いた。

まるで小動物だ。

今までの俺は気の強い女を振り回して支配するのに快感を覚えていたが、

こんなみるからに気の弱そうな女を支配して服従させるのも悪くないと思った。

蘭「…なぁ、帰りに俺ん家寄ってかね？ここから近いんだよ。」

『蘭くんの家…でも、お家迷惑じゃないですか？』

蘭「あー俺んとこ親ほとんど帰んねーし、弟居るかもだけどまぁアイツは家の付属品とでも思ってくれていーから。
　はい、行くぞー」

『で、でもイルミネーション…！』

蘭「そんなのいつでも連れて行ってやるって。」

小さい肩に手を回し、半ば強制で俺の家へ向かった。