21.追いつかない理解 ページ21
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あれから俺は、悶々としたまま日々を過ごしていた。
竜胆「…ずいぶん入れ込んでるな。あの子。」
ソファでゲームに浸っていると、食器洗いの最中である竜胆が俺にそう言ってきた
蘭「アイツは俺が居ないと生きていけないからな〜。一人じゃ何もできねーの。
初めの頃は切符の買い方も知らなかったんだぜ?俺が付いててやんねーと。」
竜胆「……」
竜胆から返事が返って来ず、気になって顔をそちらに向けると
言葉を詰まらせたような、そんな表情で何かを言いかけ
竜胆「…いや、やっぱなんでもない。」
それだけ言って、再び食器を洗い始めた。
なんだよ。
まぁどうせくだらねーことだろ。
そう思いオレは再びゲームに視線を戻した。
次の日、俺は空き教室へ足を運びながら、何度目かも分からない24日のデートプランを頭に浮かべる。
アイツの好きな食べ物、猫カフェ、もう一度連れて行ってやると言っていたイルミネーション。
Aのことだから、何処へ連れて行っても馬鹿みたいな目をキラキラさせて喜ぶんだろうな。
迷子にならないようにずっと手を繋いでいてやんねーと。
自分の頬が緩んでいるのも知らずに、空き教室の扉へ手を掛けたとき
中から男女の会話が聞こえてきた。
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『竜胆くん、相談聞いてくれてありがとうございます。』
竜胆「その言い方、解決はしたのか?」
『…はい。」
竜胆「兄貴には?」
『絶対に言わないでください。あと少しだけ…』
竜胆「だから何がだよ?」
『竜胆くん。もしも私が――…』
二人の会話の途中で、俺は扉をガラリと開けた。
相談?解決?俺には言うな?
蘭「二人でコソコソ俺にナイショ話〜?」
自分の中から、スッと何かが抜けていく感覚がした。
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作者名:平 | 作成日時:2021年11月24日 14時