03.新しい日常 ページ3
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その日を境に、空き教室で秋吉と過ごす日々が始まった。
蘭「へぇ、九州から引っ越してきたんだ。どう?六本木は九州と比べて」
『もう、かなり都会です…!未だに通学路、道に迷いそうになっちゃいますもん。』
蘭「なんだそれ。通学路で道に迷うとかウケる。」
『本当なんですよ!もう人ごみが毎朝すごくって』
秋吉は意外にも気さくな性格で、打ち解けるのに時間はかからなかった。
話によると、初対面のときは俺の威圧に圧倒されたらしい。もちろん自覚は無い。
蘭「…また傷増えた?」
『そう、ですかね。』
蘭「前に何かあったら俺に言えって言ったろ〜?」
『はい、何かあったら言いますね!』
いじめの主犯を言えば俺が一発で潰してやるのに、秋吉は一切俺に頼ろうとはしなかった。
これほどチャンスを与えているのに、この俺に自ら壁を作るとかこの女アホか?
これじゃいつになってもオトせる気がしねぇ。
こんな、いかにもウブそうな女すぐにでも手に入ると思ったが
一向に俺に惚れた様子が無い。
蘭「じゃあ、ハイこれ。」
『…飴?くれるんですか?』
俺は、そのときたまたまポケットに入っていたパインアメを彼女に渡した。
蘭「もしこれからシンドイことあったら、俺にこの飴ちょーだい?」
『……わかりました』
ぽかんとした顔で飴を受け取ると、制服の胸ポケットにしまった。
…これも、効果ナシ、か。
『灰谷先輩は、優しいですね!』
次はどんな手でいこう。
そう頭を悩ませていると、目の前で綺麗な笑顔を咲かせた。
その笑顔に、こんどはこっちがポカンとする番だった。
蘭「…はは、そんなの初めて言われた。」
マジで変な女。
こういう類の女は本当に初めてだ。たまにコッチまで接し方がわからなくなる。
『…じゃあ、授業始まるのでそろそろ行きますね。』
蘭「おう」
そう言って教室を出ていく瞬間、また秋吉の表情に陰りが差した。
…まただ。
秋吉は、ふいに酷く悲し気な
重く大きな荷物を背中に背負い込んでいるような表情を見せる。
咄嗟に俺は秋吉の腕を掴んでいた。
『せん、ぱい?』
蘭「あー…今日の放課後、ヒマ?」
『あ、はい…特に用事は』
蘭「じゃ、そのまま空けとけ。」
今日会う予定だった別の女には、適当に断りの連絡を入れておこう。
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作者名:平 | 作成日時:2021年11月24日 14時