何だってやれる 沖田side ページ43
沖田side
「くぁぁ…」
くたびれた、と。あくびを漏らしてはそんな独り言を呟いていた。あくびのせいで目元に滲んだ涙を適当に拭って、それから肩をぐるぐると回してみる。凝り固まっているようで、ゴキゴキと内側から固い音が聞こえてくる。痛いとまでは言わないが、肩凝りのせいでなんとなく肩が重い。あまり肩凝りが酷いなんてことはないのだが、今日は少し働きすぎたらしい。俺は右側の肩を左手で揉みながらにやれやれと言うように溜め息を小さくついた。部屋にはもう布団が敷かれてあり、いつでも寝転がれる状態になっている。
毎朝、Aは俺を起こすと押し入れに布団をせっせと片付けるのだ。俺はひいたままにしておいて、仕事中にどさまぎでAとしけこめないものかと思っていたりするのだが、中々隙を見せてはくれない。日下部Aとは、天然鉄壁なのである。
だが、「よっこらせ」と呟きながらに頑張って背伸びをして押し入れに布団を突っ込む姿が可愛いので、それを眺めることもひとつの楽しみだったりもするのだった。何をしても俺を楽しませてくれる。
…そんなAだが、今日は珍しくなんだか集中力が欠落している様子であった。隣で机に突っ伏しながらに横目でAを見据えていたから分かる。筆を握り締めて、書類に何かを記してはぼんやりとして、また再開したと思ったらまた上の空になる。仕事熱心で真面目なAとしては珍しいことであった。きっと俺が遅刻せずに会議に出席したことくらいに。
…疲れているのか、それとも考え事をしているのか。どの道、あまり無理をさせるべきではないと俺は判断した。だから、Aの仕事をひったくり、休憩を言い渡したのだ。それによりその仕事は俺へと回され、俺は労働を余儀なくされたのだ。まぁ、自分で選んで引き受けたのだけれど。
『ありがとうございます、沖田隊長』
と、Aは丁寧に、柔らかく微笑みながらにそう言っては部屋から一度出ていった。その笑顔を目にしたことで、俺の中にはやる気が芽生えていた。その時なら何だってやれるような気がした。土方さんにだって善意のある爽やかな笑みを浮かべて見せることだって出来るような気がした。
…まぁ、その3分後にはもうその効果は消え去っていたけれど。3分だけノリノリで筆を握り、その後はげんなりとしながらに仕事をしていた。何が何だって出来るだ。出来るなら何もやりたくない。土方さんに善意なんて持ち合わせている訳がない。爽やかに笑えるとしたらそれは奴を葬れたときだろう。
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乙愛 - なんて可愛い反則技だろう…… (2019年2月28日 23時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 白桃餅子さん» テストがあったんてすね、お疲れ様です(*^^*) 癒しになれたなら嬉しいです!ここ最近スランプのようなものに悩まされて頭を抱えておりますが、頑張らせて頂きますので、お楽しみくださいね! (2018年6月7日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - テスト明けに来たらノックアウトされました(笑)いやあ、さすがですね。文才欲しいですわ……。沖田くん最高ですな! 続きも頑張ってください! (2018年6月2日 22時) (レス) id: 7a0c5e56cd (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 姫さん» 姫さん!ありがとうございます!!わ、私の作品で…銀魂を好きに…!!感涙です!!!この小説を切っ掛けに銀魂を好きになってくれたら嬉しいです!!キュンキュン沖田さんをこれからも書いていきますので、お楽しみいただけたらと思います!!頑張らせて頂きます! (2018年6月1日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
姫(プロフ) - 最近この小説の事を知り、銀魂は知らなかったのですが好きになりました!読む度に沖田さんにキュンキュンさせられてます!続き楽しみに待ってます。 (2018年5月27日 6時) (レス) id: ce80cc2f9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年5月3日 20時