珍しい ページ29
…ぐるぐるとそんなことを頭に巡らせていれば、唐突に聞こえたそんな声に、私は肩をびくつかせては声のした方向を向いた。そこには資料が広げられている机に突っ伏しながらにこちらを見据えている沖田隊長が座布団の上であぐらをかいて座っており、怪訝そうな顔を浮かべている。考え事に集中しすぎていたため、突然のことに目を丸く見開いて、その上「うわっはい!!」なんていうおかしな声を出してしまった。驚きと返事が合体してしまったような声であった。心臓はバクバクと早めのスピードで音を刻んでおり、じっと私を見つめる彼の視線に自分の視線を交わらせていれば、少しずつその音もおさまってくる。無意識のうちに空いていた左手を心臓がある辺りに持っていっていた。
ふぅ、と息をついてから、私は沖田隊長に「なんですか?」と問い掛ける。私の名前を呼んだのだから、何か用件があったのだろう。驚いていて数秒が経過してしまったけれど、改めて聞く姿勢をする。沖田隊長は尚も不思議そうな顔をしながら「なんですかじゃねーよ」と。
「何回も呼んでたぜィ、Aって」
「え、あ、ごめんなさい…考え事してて…」
どうやら私の名前を何度も呼んでいたらしい。それに気付かないくらいに思考してしまっていたようだ。悪いことをしてしまった。
「何かありましたか?」
「いや、お前がずっとボケーッとしてるから気になっただけでィ」
上の空なんて珍しいじゃねーか、と。沖田隊長はなんともだらしのない格好のままで言う。珍しいのかそうでないのかは自分では分からないけれど、彼がそう言うのだからそうなのだろう。ほぼ毎日こうして仕事をしているのだし、非番であっても二人で居ることも多いから、彼は私のことをよく知っていてくれている。それに、私のことをよく見ていてくれている。そんな彼の言うことだから、そうなのだろうと素直に思える。
「いつも俺にゃ手を動かせだサボるなだ言ってるくせに、手が止まってるぜィ?」
「……それは失礼致しましたね」
にんまりと。ここぞとばかりに痛いところをついてくる沖田隊長は、本当に性格が悪い。人がこんなにも悩んでいると言うのに。私だって好きで手を止めているわけではない。好きで上の空でいるわけではない。沖田隊長は仕事をしたくないから手を止めてあーだこーだとぐだぐだやっているんじゃないか。一緒にしないで頂きたい。
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乙愛 - なんて可愛い反則技だろう…… (2019年2月28日 23時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 白桃餅子さん» テストがあったんてすね、お疲れ様です(*^^*) 癒しになれたなら嬉しいです!ここ最近スランプのようなものに悩まされて頭を抱えておりますが、頑張らせて頂きますので、お楽しみくださいね! (2018年6月7日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - テスト明けに来たらノックアウトされました(笑)いやあ、さすがですね。文才欲しいですわ……。沖田くん最高ですな! 続きも頑張ってください! (2018年6月2日 22時) (レス) id: 7a0c5e56cd (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 姫さん» 姫さん!ありがとうございます!!わ、私の作品で…銀魂を好きに…!!感涙です!!!この小説を切っ掛けに銀魂を好きになってくれたら嬉しいです!!キュンキュン沖田さんをこれからも書いていきますので、お楽しみいただけたらと思います!!頑張らせて頂きます! (2018年6月1日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
姫(プロフ) - 最近この小説の事を知り、銀魂は知らなかったのですが好きになりました!読む度に沖田さんにキュンキュンさせられてます!続き楽しみに待ってます。 (2018年5月27日 6時) (レス) id: ce80cc2f9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年5月3日 20時