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くすぐられる 沖田side ページ20

「んなこと言ったって、お前業務時間が終わっても、総悟さんって呼ばねェじゃねェかよ」

「う゛っ…」


と。俺がそう言ってやると、Aは何も反論できないと言うように言葉を詰まらせた。何かを言い返したかったけれど、その言葉は出てくることを躊躇うように喉の奥に引っ込んでいったというような。当然だ。反論なんて出来ないに決まっている。俺が指摘したことは真実なのだから。俺はまったくの事実を口にしているのだから、言い返せるわけがない。真実はいつもひとつである。ごにょごにょと口をもごつかせて何かを言いたげに、けれど言えなくて言葉を探しているようなソイツの顔を俺は覗き込み、「だろ?」と問い詰めるように言う。

Aは目を合わせようとしない。その目を追跡して無理矢理に目を合わせ、ビクッと驚いたように目を丸くさせては足を止めたソイツにニヤリと俺は笑う。


「話が違うと思うんだがねィ?」


…Aの顔が青ざめていく。俺は俺に出来る限り爽やかな笑みを浮かべながらに告げたつもりでいたのだけれど、思いの外Sが滲み出てしまったのかもしれない。Sは隠すのが難しいのだ。Aはそろーりと視線を右下にずらしては、「…そ、それに関しましては…その…」と呟いて、弁解しようと思考しているようだ。その顔が面白くて、俺はもう少しいじってやることにした。


「…それに関しましては、何でィ?」

「えーっと、ですね…」

「ん?理由を聞かせて貰おうじゃねーか」


…Aは言った。デート中に俺の名前を恥ずかしそうに口にしてから、俺が「これからはその呼び方で」と注文したことに対して、「仕事時間以外で」「善処します」と。それなのにも関わらず、下の名前で呼ばれたのはその日から今日が初めてのことであった。呼ばれていたなら俺が覚えていないわけがないので勘違いなんかでもない。そのため、さっきも言った通り、話が違う。

Aは暫し目をうろちょろとさせてから、漸く俺をチラリと見据えて。「だって、」と。唇を少し尖らせて、ぼやくように呟く。


「…まだ慣れてないものありますけど、誰かに聞かれたら恥ずかしいし…」


その他恥ずかしいし…と。自身の両手の指先を意味もなく擦り合わせながらに、Aはそう続けた。


最近気付いたことだが、Aが口にする「恥ずかしい」という言葉が、どうやら俺は好きらしかった。何故だろう、何かがくすぐられる。恐らくそれは理性が感情の方に傾きかけていることと同じことなのだと思う。

つまり、俺は落ち着かなくてはならなかった。傾きかけた理性をどうにか保たせる。

真面目さと誠実さ 沖田side→←やめるつもりは 沖田side



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設定タグ:銀魂 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
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乙愛 - なんて可愛い反則技だろう…… (2019年2月28日 23時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 白桃餅子さん» テストがあったんてすね、お疲れ様です(*^^*) 癒しになれたなら嬉しいです!ここ最近スランプのようなものに悩まされて頭を抱えておりますが、頑張らせて頂きますので、お楽しみくださいね! (2018年6月7日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - テスト明けに来たらノックアウトされました(笑)いやあ、さすがですね。文才欲しいですわ……。沖田くん最高ですな! 続きも頑張ってください! (2018年6月2日 22時) (レス) id: 7a0c5e56cd (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 姫さん» 姫さん!ありがとうございます!!わ、私の作品で…銀魂を好きに…!!感涙です!!!この小説を切っ掛けに銀魂を好きになってくれたら嬉しいです!!キュンキュン沖田さんをこれからも書いていきますので、お楽しみいただけたらと思います!!頑張らせて頂きます! (2018年6月1日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 最近この小説の事を知り、銀魂は知らなかったのですが好きになりました!読む度に沖田さんにキュンキュンさせられてます!続き楽しみに待ってます。 (2018年5月27日 6時) (レス) id: ce80cc2f9a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年5月3日 20時

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