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197 『何度も何度も』 ページ48

此方も毎度の如く煉獄さんが煉獄さんではなくなっております。ご注意をば。つかヤンデレになってるかもしれん。


.


 俺は彼女の腕を乱暴に掴んで、ぽかんと口を開けるA少女の表情をよく見ないままに、そのまま前へと──彼女は後ろへと、畳の上に倒れる。「やっ、」と微かに悲鳴が彼女の口唇から出た。

 細い両手首を片手で纏めて、彼女の頭上に縫い付ける。空いた手は顔の横に突いて、腹の上に馬乗りになった。未だ傷が癒えていないだろうが、俺はそんなことは無視して(またが)る。「ッう"」と苦痛の声が聞こえた。


 彼女は自分が押し倒されていることに、しばらく理解が追い付いていないようだった。瞳が天井、俺の顔、自分の頭上と巡る。それから、ひ、と息を呑んだ。



 怯えた。



「は、な……、何。で。離、して」

「嫌だ」



 腹部が圧迫されている痛みからか、彼女の抵抗は心許ない。通常ならば俺よりも少し弱いくらいの筋力を誇るその腕は、微かに揺れ動く程度の抵抗にしかなり得なかった。

 俺の返事を聞いて、離してもらうのは無理だと判断したのか身を捩る彼女。


 ……どうしてそれが、無駄であると気づかないのか。



「いぐッぅ……!?」



 ぐ、と腹の傷に体重をかけた。彼女の目があらん限りに見開かれて歪む。ふ、ぅ、と痛みに耐え忍ぶ声が聞こえて、力を緩めた。途端荒く息をする。彼女の一挙一動が、俺に掛けられていた。

 俺は無言で彼女を見下ろした。ふー、ふー、と震えながら呼吸をする彼女は、泣きそうな顔で此方を見上げる。ふるふる、と弱々しく顔を振った。何かを否定したいようだが、言ってくれなければ分からない。そう告げれば、「は、なして」と再度実の無い要求をしてきた。



 顔が反射的に顰められ、彼女がびくっと怖がるように体を震わせる。……別に怖がらせるつもりは無い。


 空いた片手で頬を撫でてやれば、相変わらずその身を縮こませながらも震えは収まって来ていた。浅い呼吸音が何度も何度も、その部屋で響いた。



.

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白夜の世界(プロフ) - まくすうぇるさん» ですよね。(真顔) (2020年5月8日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - やんでゅぇる (2020年5月8日 21時) (レス) id: db32ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - まくすうぇるさん» ありがとう御座いますっ……!!今回の描写とかちょっと人によってはぐろいってなるかもしれないので、いつも注意書きしているのですが嬉しいです。三人称の小説少ないので、万人受けはしないと思っていたのですが……、結構皆反応してくれますね(笑)。 (2020年5月7日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - こういう描写書けるのって凄いです。尊敬します。(※嫌みではないです。純粋にそう思ってます) (2020年5月7日 21時) (レス) id: db32ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりなんぽん - Ecarlateさん» 途中から失礼します!私も順番知りたかったのでありがとうございます! (2020年5月5日 15時) (レス) id: 3ac698d03c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2020年4月26日 17時

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