182 『酒豪伝説』 ページ33
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「初めまして、産屋敷耀哉だ。鬼殺隊を一応取り仕切っている者だけど、君が私を『敬わなくて良い』と判断したら、全く敬語なんて使う必要なんて無いんだよ」
「え」
思わず変な声が出て、ぎろりと周りの人(主に榊原と不死川。悲鳴嶼は「南無……」と泣いているだけだった)に睨まれる。肩を竦ませたが、「い、いや、大丈夫です」と何とか絞り出せば雰囲気が緩和された。いや何が大丈夫だよ、と自分で自分に突っ込むA。
そんな様子の自分の部下たちを微笑ましげに見つめた産屋敷は、「君も同席していて良いよ。では、会議を始めようか」と高らかに告げた。
+ +
「すげぇ人だった」
「だろ」
屋敷に返って来たAは一言榊原にそう言ったが、彼は当然そうにドヤ顔で瓢箪を持って来た。師匠がドヤ顔する理由ねーだろ、と内心で文句を言いつつもコクリと頷いた。言わぬが吉。
ん、と日本酒が入った瓢箪に口をつけ、さかしまにして「ぷは」と飲む。
うめェ、と笑いながら榊原は彼女の方を向いた。少しばかり首を傾げる彼女に指をさして問うた。
「その首巻き、どうしたんだァ?」
「──あ、これですか。ちょっと怪我しまして」
一瞬逡巡したAが笑ってそう答えるのを、どこか違和感を感じながら詳細を訊くことはせず、「へェ」と相槌を打った。それからニヤリと口角を上げ、「飲むかこれ」と瓢箪を掲げる。
ん、と驚いた表情を浮かべた彼女。だが彼に応じるように同じような笑みを浮かべて、ててて、と彼の隣に近づいて徳利を差し出す。何処から用意したァ、と苦笑する己の師匠に、内緒ですと笑顔を浮かべた。
トクトク、と酒が注がれる。
その透明色の液体をじっと見つめたAは、本当に良いのかと上目遣いに榊原を見た。「まァ、色んな付き合いもあるだろうし、少なくとも飲むことは覚えといた方が良い」との言葉に、ぱぁっと顔を輝かせて徳利に口を付ける。
「ん……! ふわふわします!」
「ふっ……、まァそれが酒だ。少なくとも自分がどれだけ飲める奴か把握しとけー」
「もっと下さい師匠!」
「オレの分がなくなるから今日はこれだけだ。今度買ってきてやるよ」
「本当ですね! 言質取りましたよ師匠!」
「おォ」
酒豪になりそうだなァ、と榊原は快活に笑った。
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お前が言うなって話だけど未成年飲酒はダメだぞ。
それと伊黒と不死川が来たらお次は……?? (読者が絶対に引っかかることを想定している目)
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白夜の世界(プロフ) - まくすうぇるさん» ですよね。(真顔) (2020年5月8日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - やんでゅぇる (2020年5月8日 21時) (レス) id: db32ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - まくすうぇるさん» ありがとう御座いますっ……!!今回の描写とかちょっと人によってはぐろいってなるかもしれないので、いつも注意書きしているのですが嬉しいです。三人称の小説少ないので、万人受けはしないと思っていたのですが……、結構皆反応してくれますね(笑)。 (2020年5月7日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - こういう描写書けるのって凄いです。尊敬します。(※嫌みではないです。純粋にそう思ってます) (2020年5月7日 21時) (レス) id: db32ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりなんぽん - Ecarlateさん» 途中から失礼します!私も順番知りたかったのでありがとうございます! (2020年5月5日 15時) (レス) id: 3ac698d03c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2020年4月26日 17時