検索窓
今日:17 hit、昨日:9 hit、合計:82,601 hit

181 『熱烈な接吻』 ページ32

.


 地面に即座に引き倒された。「ぉあっ」と呻きながら、地面と熱烈に接吻(キス)をかまされるAは、砂の味を全身で味わった。引き倒した榊原の腕は既に離れていたので、よろよろと自分で頭を下げる。


 ──この声の主が、お館様。




「お館様もご健勝のようで何よりで御座います。果てることなくご清栄のことを、我ら一同心よりお祈り申し上げます」




 Aはぼんやり『このクソ師匠こんな綺麗な言葉遣いできたんだな……』などと考えながら、「頭を上げてくれて構わないよ」と告げる男性の声を聞いていた。

 どうすれば良いのか分からないので周りをちらりと見れば、その言葉通りに顔を上げている皆。ただし(ひざまず)いている状態なのは同じなので、少しもたつきながらも同様の格好をした。


 くすり、と彼が笑う。


 ほわ、と体の何処かが温まった気がした。ほわ、ほわと。

 ──Aが察するに一番偉い人のお館様と呼ばれるその人物は、艶やかな黒髪の人物だった。しかし、その美しいであろう顔は半分ほどの火傷のような(ただ)れがあった。そのせいか左目は白濁しており、右目も浸蝕されつつああったがきちんと光がある。二つの瞳を見比べれば、もう左目が使い物にならないことは容易に理解できた。



「今日も誰一人欠けることなく、柱合会議をできることが嬉しいよ。ありがとう」

「御礼など。此方こそそれを申し上げたいのです」

「ふふ。ありがとう、槐。──ところで、横の子は初めて見るね。まさか君の継子かい?」



 急に議題が自分のこととなり、どきんとAの心臓が跳ねあがった。何だか居た堪れなくなって、ぺこり、と一度顔を下げる。

 榊原は応答するように顎を引き、「お館様にもご紹介させて頂きたいと存じ、不肖ながら連れて参りました。ご不満ならば即座に退出させます」という彼女からすればぎょっとする一言をのうのうと言い放った。はっ? と彼女がちらりと横を睨めば、ガン無視される。


 クソが、と脳内で毒づくAのことなど露ほども知らないだろう彼は「大丈夫だよ」と笑って言った。

 ──あ、好き。めっちゃ好き。Aはそんなことを思った。笑い方可愛い。お館様好き。めっちゃ好き。



 ……勿論恋愛感情ではなく、職場関係としての『好き』であった。お館様のファンが今此処に一人増えた。



.

182 『酒豪伝説』→←180 『良いお日和』



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (119 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
175人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , シリアス , ギャグ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

白夜の世界(プロフ) - まくすうぇるさん» ですよね。(真顔) (2020年5月8日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - やんでゅぇる (2020年5月8日 21時) (レス) id: db32ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - まくすうぇるさん» ありがとう御座いますっ……!!今回の描写とかちょっと人によってはぐろいってなるかもしれないので、いつも注意書きしているのですが嬉しいです。三人称の小説少ないので、万人受けはしないと思っていたのですが……、結構皆反応してくれますね(笑)。 (2020年5月7日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - こういう描写書けるのって凄いです。尊敬します。(※嫌みではないです。純粋にそう思ってます) (2020年5月7日 21時) (レス) id: db32ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりなんぽん - Ecarlateさん» 途中から失礼します!私も順番知りたかったのでありがとうございます! (2020年5月5日 15時) (レス) id: 3ac698d03c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2020年4月26日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。