180 『良いお日和』 ページ31
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そして目の前の巨体がその声につられ動いたことで、Aにもその人物の姿が見えた。ばちり、と視線がぶつかる。そのまま同じように口を開いて、
「不死川ぁ!?」「A!?」
「お、知ってたのか?」
ぴったりと声を揃えて互いの名を叫んだ二人に、宇髄が怪訝そうに訊ねた。その言葉に「ま、まぁ」とどもりながらAが答えた。多少焦ったようなその風体に、彼は馴れ馴れしくAの肩にその筋肉質な腕を回す。
ぅげっ、と太過ぎる腕に首を絞めつけられるような構図になり、Aが呻き声を出した。彼は明らかにニヤニヤとした表情で、「秘密は無しにしようぜ、俺とお前の仲だろ?」と耳元で色気たっぷりに囁く。そんなことをされたことが無かったAは面白いぐらいにぶわぁっと顔を赤くさせ、「ふっざけんな、離しやがれ!」と叫んだ。
その反応に気を良くしたのか、宇髄が更に笑みを深めてホレホレどうしたと煽る。彼女の喉が引き攣った音を出し、ぶち切れる一秒前になった瞬間、
「宇髄ィ。その辺にしとけェ」
「……お? 何だ、派手に嫉妬か?」
「ンなもんじゃねェ、そろそろお館様が来る頃だろうから言ったんだァ」
途端に宇髄は「そうか」とぱっと手を離した。ほぼ首が締まっているような状態だったAはゲホゲホと咳き込んだ。それから助けてくれたお礼を言おうと、不死川に目を向けたが──んん、と黙る。
それから物言いたげに彼を見つめた。不死川が顔を顰め、「何だァ」と言った。
「いや……、おま──不死川は柱だったんですね、と思って」
「──? テメェ敬語なんて使ってなかったろォ?」
「柱の人達は流石に敬語使いますよ」
不死川が眉間の皺を深く刻んだ。その顔からはありありと不満が見てとれ、あまりの分かりやすさに榊原が「ぶっ」と噴き出す。ギロリと不死川が彼を睨んだが、何処吹く風という様子で口笛を吹いた彼に溜め息を一つ。
それから実際にAに文句を言おうと──、
「やぁ。良い
力強く、そして果てしなく優しい声音が、凛として響いた。
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白夜の世界(プロフ) - まくすうぇるさん» ですよね。(真顔) (2020年5月8日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - やんでゅぇる (2020年5月8日 21時) (レス) id: db32ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - まくすうぇるさん» ありがとう御座いますっ……!!今回の描写とかちょっと人によってはぐろいってなるかもしれないので、いつも注意書きしているのですが嬉しいです。三人称の小説少ないので、万人受けはしないと思っていたのですが……、結構皆反応してくれますね(笑)。 (2020年5月7日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - こういう描写書けるのって凄いです。尊敬します。(※嫌みではないです。純粋にそう思ってます) (2020年5月7日 21時) (レス) id: db32ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりなんぽん - Ecarlateさん» 途中から失礼します!私も順番知りたかったのでありがとうございます! (2020年5月5日 15時) (レス) id: 3ac698d03c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2020年4月26日 17時