169 『戦慄する』 ページ20
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児童連続失踪の犯人は、人間だった。その男が、犯人だった。
不死川がそれに気づいたのは、Aと別れて円が重なった区域を見回っている時だ。とある廃屋を見つけ、妙な胸騒ぎがしてそこに無断で入る。まぁ誰に許可を貰えばいいんだという話ではあるが。
そこで見つけたのが、子供達の喰われていない腐った遺体だ。出入りが少なかったからこそ悪臭が周りまで轟いていなかったものの、不死川がそれを見つけてしまった今ではとんでもない臭いが周りに立ち込めている。勿論警察にすぐさま届け、封鎖してもらった。
つまり、犯人が鬼ではないということで──相手が人間だったということで。
鬼ならば殺せる。しかし人間は殺せない。囮なぞやらせたAは、きっとまだそれに気づいていないはずだった。それで嫌な予感がして来てみれば、前述の最悪の結果があった。
元々ヒントはあった。鬼になり人間の事情などお構いなしなはずなのに、一人の児童ばかり狙った。どうやったって町中でしか殺せないはずなのに、何の噂も沸かなかった。
不死川は己の不甲斐なさにギリッと奥歯を噛みしめて、交番のお巡りに「コイツがさっきの廃屋の犯人だァ。
+ +
最寄りの交番に行ったとはいえ、先程の場所からはそこそこの距離があった──屋根の上を走り、最短距離でそこへ向かう。
ぽつり、ぽつぽつと、雨が降って来た。
「──A」
初めて不死川が、彼女の名を呼んだ。Aは雨に濡れた髪の毛の奥から、その瞳で不死川をしっかりと捉えた。先程の焦点が合っていない状態からは回復し、その目が丸くなる。そしてすぐさま地面を蹴って、不死川の元へと走り出した。
「しな、不死川ぁ! 良かった、よか、ありがと、ごめん、私、今支離滅裂なこと言ってるよなぁ、ちょっと、待って。うん、おち、落ち着くから。ごめ、あの、ありがと」
何度も言葉を詰まらせながら、気丈に振舞おうとするAの口を、不死川が手で塞いだ。
え、と戸惑う彼女に、悲しげに瞳を伏せながら、不死川「悪かった」と謝る。それから、
「大丈夫だァ。俺がついてる」
唇が、戦慄する。
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白夜の世界(プロフ) - まくすうぇるさん» ですよね。(真顔) (2020年5月8日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - やんでゅぇる (2020年5月8日 21時) (レス) id: db32ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - まくすうぇるさん» ありがとう御座いますっ……!!今回の描写とかちょっと人によってはぐろいってなるかもしれないので、いつも注意書きしているのですが嬉しいです。三人称の小説少ないので、万人受けはしないと思っていたのですが……、結構皆反応してくれますね(笑)。 (2020年5月7日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - こういう描写書けるのって凄いです。尊敬します。(※嫌みではないです。純粋にそう思ってます) (2020年5月7日 21時) (レス) id: db32ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりなんぽん - Ecarlateさん» 途中から失礼します!私も順番知りたかったのでありがとうございます! (2020年5月5日 15時) (レス) id: 3ac698d03c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2020年4月26日 17時