164 『地図に描く』 ページ15
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はァ? と不死川は疑問の声で、彼女に訊き返した。彼女は臆することなく、もう一度言った。
「だから、地図を貸してくれ」
「……? 地図なんざ使ってどうするつもりだァ?」
Aに怪訝そうにそう問いかけるが、彼は言う通りに宿屋の主人に交渉して地図を貰ってきてくれた。彼女がいそいそと文机の上で墨を用意するのを不可解そうに見つめる。実際彼女は何の説明もなく、ただ『地図を貸してくれ』としか言わなかった。
すると、その貰って来た地図にいきなり書き込みを始めるA。ぎょっとした不死川だが、これは既に貰ったものであったので、そのまま彼女の隙にさせる。これが借り物であったら一大事だったが、この宿屋の主人が善人であったことがAの救いだろう。
──そして六つ、地図の上に丸が描かれた。その丸はとても小さく、縮尺から考えれば大体家屋一つ分ほどの大きさだ。
六、六という数字は、確か。
「そ」
Aが書き込んでいるのを後ろで見ていた不死川の方に、彼女がくるりと振り返って、「いなくなった子供達の人数だよ」と自慢げに笑った。
「じゃあ、この丸は──」
「その子達の家」
あっけらかんとした応えに、不死川が釈然としないように「ンでそんなこと」と訊ねる。
数秒間彼女がじっと不死川を見つめた。不死川が訝しんだ頃に、「へ」と鼻で笑う。完璧に煽りをマスターしたその顔面と言動に、不死川の怒りメーターが限界まで上昇した。
が、此処で彼女を殴ればもっと聞き出すのが面倒になる未来は想像に難くない。怒りを抑えつけ、「さっさと言え」と先を促した。
Aも先程の笑みで満足だったのか、くるりとまた文机に向かい直して口を開いた。
「こういうことはさ、大体皆家の遠くで無意識にやりたがるもんだよ。今回の場合は住処の遠くっつった方がいいがな。でも遠過ぎるとと行動するのに時間がかかっちまう。だから、今回の場合は……」
Aは一つの丸を大きく囲むように、円を描く。それから他の丸も同じように書き足していく。何個もの丸が重なったような図ができた。
不死川が目を見開いた。
「こ、りゃァ」
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何かの理論だったんだよなぁ〜! ド忘れしちゃったんだけど、確かゲーム理論……これは違った……マジで何だったっけ……。
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白夜の世界(プロフ) - まくすうぇるさん» ですよね。(真顔) (2020年5月8日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - やんでゅぇる (2020年5月8日 21時) (レス) id: db32ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - まくすうぇるさん» ありがとう御座いますっ……!!今回の描写とかちょっと人によってはぐろいってなるかもしれないので、いつも注意書きしているのですが嬉しいです。三人称の小説少ないので、万人受けはしないと思っていたのですが……、結構皆反応してくれますね(笑)。 (2020年5月7日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - こういう描写書けるのって凄いです。尊敬します。(※嫌みではないです。純粋にそう思ってます) (2020年5月7日 21時) (レス) id: db32ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりなんぽん - Ecarlateさん» 途中から失礼します!私も順番知りたかったのでありがとうございます! (2020年5月5日 15時) (レス) id: 3ac698d03c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2020年4月26日 17時