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48 『でっか』 ページ48

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 ──でっか。



 少女が榊原の屋敷を見て一番最初に思ったのは、その一言である。


 何やら秘密保持だとか何とか言われて訳の分からん道を通ったり黒服の人に運ばれたりして到着した屋敷。正真正銘、現樹柱・榊原槐の家である。

 少女は胡乱な目を榊原に向けた。到底こんな奴がこんな御大層な屋敷を持っているとは考えられなかったからである。無論そんな目を向けても此処はたしかに彼の家であり、少女は肘鉄を鳩尾に喰らうことになるだけであったが。




「……っ!! テ、メェっ……!!」

「今日からお前はオレの継子だ。如何なる異論も認めん。覚えておけ」




 隊服を身に着けず、黒い着流しによく映える赤い帯を付けている榊原。煙管(キセル)を吹かしながら言う榊原は、その場面だけ切り取ればイケメンの類であった。松葉色の瞳を細めて、「早く来い」と鋭く言い放つ。


 そして少女も、蝶屋敷で与えられていた病人服から違う着物へと着替えていた。

 全体的に薄黄緑の色に、黒い線が幾本か入っている。カナエが「榊原さんみたいじゃない?」とニコニコしながら渡して来た時のことを少女は一生忘れない。……あんな満面の笑みで言われちゃ断れなかった。



「取り敢えずなァ、それ着替えてこい」

「あ? んでだよ」

「お前の強さは大体見切ったけどな、取り敢えず手合わせをするぜ。その着物じゃ動きにくいだろうし、汚したくねェだろうが」

「──」



 ──案外この男も、人のことをよく考えているらしい。



 少女は言われた通りに、与えられた部屋の中で渡された服に着替えた。隊服と若干似ているものの、軽く防御性の無い布だ。動きやすい軽装で、戦闘には向いていないと言ったところか。

 着替え終わるのを待っていたのか、榊原は(ふすま)を開けて出て来た少女を見てニヤリと笑い、「来い」と一言言い放ち、木目状の廊下を歩く。


 ふと少女は、榊原の足音が全く聞こえないことに気が付いた。


 ──マジで化物だったのか。

 少女は頭を抱えた。


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白夜の世界(プロフ) - 内田さん» 応援ホントありがとう御座います……!皆様の心を動かせるような小説を書くために頑張ります!! (2020年4月15日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - はじめて読ませていただきました!すごく面白くて、少女ちゃんの生い立ち、すごく感動しました。これからも応援させてください! (2020年4月15日 16時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 成程・・・。私の合作相手もそんな感じですよww (2020年4月14日 12時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 燐火さん» えぇ、合作はしない主義ですね。自分がパソコンにかじりついていられる時間が非常に不定期ということやその他諸々ありまして……。 (2020年4月12日 8時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 白夜の世界さんって合作とかしないんですか? (2020年4月11日 16時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2020年3月28日 16時

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