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21 『泣かないで』 ページ21

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「あぁっ……! ああ、ああ、ああっ! どう、どうしろって、しけ、止血。血、布、な、何か無いか、何か、何か」



 少女は少年の矮躯を抱き締めながら、定まらない視点で辺りを懸命に見渡した。無い、無い、何も無い。少年を救えるようなものは何も無い。何一つ此処には存在しない。


 ──あ、ぁあ? え、これ、え? どうすれば良い? 何、何すりゃあ助かる、助かるんだ?


 少女はひたすら困惑していた。狂いそうなほど切望した。

 少年の「かは」と空気が抜けるような音と共に、血が吐きだされる。少女と少年の着物は既に血だらけだった。少年の顔からはどんどん血の気が失せて行く。命が少女の両手から零れて、零れて、



「待っ、ぇ、え? おま、お前、こんな、」



 少女はようやくそこで我を取り戻した。

 少年が腹を刺し貫いたこと、少女が少年を救う手立てはもう何一つ残されてはいないこと、──少年が、少女を救うためにそうしたこと。その全てを理解して、正気になって。



 やるせない憤怒が、少女の中を満たした。





「お前。──ッんでこんなことしたんだ!! あ!? これが俺の、俺とジイさんの為になるってか!? そう考えたのか!? バカかテメェは! バカだ!!」





 怒鳴る。喚く。叫ぶ。がなる。吠える。


 少女はとにかくそうした。己の中の憤怒を少年へとぶちまけた。眉を吊り上げ、唾を吐き、怒った。




「あ!? んとか言えよ! それでテメェはサヨナラか! 俺だけ置いてジイさんと一緒におさらばか! っざっけんじゃねえよ!! オイ!!」




 少年を眉を下げ、困ったように笑った。依然として叫び続ける少女の頬に、文字通り血反吐を吐きながら震える手を置いた。



 少年はそれを拭った。それは、最初は一粒の雫だった。それがボタボタと大量に少年へと落ちる。瞳は乾くことを忘れたように潤い続ける。少女はそれを無視して叫んでいた。


 幼い子供のように、この世の理不尽に抗うように、泣き喚いていた。




 少年は、言った。






「────泣か、ないで。くださ、ぃ……」

「──」






 少女は喘ぐように息を吸って。

 声にならない言葉が、吐息として出された。


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22 『助けてください』→←20 『悪行≒』*



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白夜の世界(プロフ) - 内田さん» 応援ホントありがとう御座います……!皆様の心を動かせるような小説を書くために頑張ります!! (2020年4月15日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - はじめて読ませていただきました!すごく面白くて、少女ちゃんの生い立ち、すごく感動しました。これからも応援させてください! (2020年4月15日 16時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 成程・・・。私の合作相手もそんな感じですよww (2020年4月14日 12時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 燐火さん» えぇ、合作はしない主義ですね。自分がパソコンにかじりついていられる時間が非常に不定期ということやその他諸々ありまして……。 (2020年4月12日 8時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 白夜の世界さんって合作とかしないんですか? (2020年4月11日 16時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2020年3月28日 16時

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