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15 『誰も何も』 ページ15

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「大丈夫、大丈夫か? なぁ、返事、生きてる、生きてるよな?」



 少女はゆさゆさと男性の体を揺さぶった。他の子供達の生死は確認していないが、この惨状では生きている者はいないだろう。

 男性からの、返事は無い。



 少女の中で、何かが決壊しそうになる。ずっと強張らせていた頬が、ゆるゆると力を失っていく。唇が震える。視界が歪む。「──ぁ」

 何故だ。何が悪かったんだ。「──もう」

 一体どうすれば良かったんだ。「──何で」

 どんな、表情を、すれば良いんだ。「──やだよぅ……!」



「…………誰、か、……、居るか……」

「!」



 少女は目を見張った。慌てて「居る、居るぜ、俺だ! ジイさん、大丈夫なんだな、生きてるんだな!」と叫ぶ。その表情は誰が見ても安堵しており、少女は笑みを零すことが止められない。男性の手をしっかりと握る。

 が、男性の次の言葉を聞いて、少女の笑みが固まった。



「もう……生き、られんよ…………」

「──」



 男性は死に至るまでの激痛の最中、何とか口角を上げて、微笑む。少女を少しでも安心させる為に、少女が先程少年の前で浮かべていたような笑みを。

 少女は理解した。してしまった。



 ──ああ、もう、助からない。



 何で、と弱々しく声が出た。ふるふると首を横に動かした。何を否定すれば良いのか分からないけど、否定しなければ、自分が壊れてしまう。そんな予感がした。

 駄目だよ。嫌だよ。


 男性は少女に、静かに、幼子に言い聞かせるように、言葉を紡いだ。命の灯火を守ることよりも、少女に言葉を伝えることを優先した。




「私と……話して、くれて……、ありが……。幸せ、だっ…………。頼、むから……。

 生きて、くれ………………!!」


「──」




 最期の言葉だけは、はっきりと、聞こえた。




 ──ずるり。




 男性の手が、少女の手から滑り落ちた。

 誰も何も言わなかった。







 最期を見届けた少女は、応答するようにコクリと頷いて、唇を引き結んだ。







──その眦に浮かんだのが、どういう意味の涙だったかは少女は知らない。知らないけれど、それは、知らないままで善いと。

 そう、思った。




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白夜の世界(プロフ) - 内田さん» 応援ホントありがとう御座います……!皆様の心を動かせるような小説を書くために頑張ります!! (2020年4月15日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - はじめて読ませていただきました!すごく面白くて、少女ちゃんの生い立ち、すごく感動しました。これからも応援させてください! (2020年4月15日 16時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 成程・・・。私の合作相手もそんな感じですよww (2020年4月14日 12時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 燐火さん» えぇ、合作はしない主義ですね。自分がパソコンにかじりついていられる時間が非常に不定期ということやその他諸々ありまして……。 (2020年4月12日 8時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 白夜の世界さんって合作とかしないんですか? (2020年4月11日 16時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2020年3月28日 16時

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