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43 『話だけ』 ページ43

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 少女はそんな話をカナエに聞かされ、「えぇ……」という表情で彼女を見ていた。しのぶは何回か聞いていたので話自体は知っていたが、やはり何度聞いても信じられないものである。

 「だから、根は良い人なのよ!」と笑顔で言うカナエ。少女は若干身を引きながらも、仮にそいつが良い奴だったとして、と話す。



「俺は痛い思いをしたことを忘れてないっすから」

「……まぁ、それはそうよね……」



 ちょっと落胆した様子になる彼女に、少女は慌てる。少女は一応この胡蝶カナエという人物に反感は無いし、むしろ良い人物──もう少し少女らしい言葉で言えば、クソがつく程のお人好しだと思っている。


 なのでそういう顔をされて困るのは少女なのだ。

 きょときょとと視線を不安そうに動かし、何とか言い繕おうとする。



「あっ、あの、……あれっす、あの、話だけは聞いてみますから」

「本当!?」

「えっ、あの、まぁ」

「良かった〜! 嬉しいわ、榊原さんのことを誤解している人は多いから! 貴方がどうか皆の誤解を解いてあげてね!」

「ちょっと待っ」



 先程の悲しそうな表情とは豹変し、全身から喜びのオーラを出すカナエ。めちゃめちゃ可愛い。じゃない、いや待って、俺はまだ継子になるなんて言ってないと反論しようとした少女。

 そして少女が何か言う前に、カナエはるんるんとした足取りで部屋を出て行った。


 取り残されたしのぶと少女。

 少女がぽつりと言う。



「……あれ、あんたの姉だっつったよな」

「あれって言わないで。……そうよ。ちょっと抜けているところがあるけど素晴らしいでしょ」

「アレが抜けてるって程度(レベル)か!?」

「ちょっと抜けてるだけよ!」



 カナエはこのやり取りを知らない。




+ +




 沈む、沈む、沈んでく。

 泡沫に呑まれ、陽炎に巻かれ、夢幻を見続ける。

 手を伸ばす。

 届いた時は、もう遅い。

 失うことは、恐れること。

 日々の恐怖に、ただ怯える。





 ぶくぶく、ぶくぶく、ぶくぶくぶくぶく。




.

44 『守銭奴の想い』→←42 『胡蝶カナエ』



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白夜の世界(プロフ) - 内田さん» 応援ホントありがとう御座います……!皆様の心を動かせるような小説を書くために頑張ります!! (2020年4月15日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - はじめて読ませていただきました!すごく面白くて、少女ちゃんの生い立ち、すごく感動しました。これからも応援させてください! (2020年4月15日 16時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 成程・・・。私の合作相手もそんな感じですよww (2020年4月14日 12時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 燐火さん» えぇ、合作はしない主義ですね。自分がパソコンにかじりついていられる時間が非常に不定期ということやその他諸々ありまして……。 (2020年4月12日 8時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 白夜の世界さんって合作とかしないんですか? (2020年4月11日 16時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2020年3月28日 16時

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