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「……そうだよなぁ…」
ガクリと机に突っ伏す銀時。
「何があって突然、そんなことを聞くんだ?」
桂はそう尋ねながら空いた銀時のコップに酒を注ぎ、自分は残りの半分を胃へ流し込む。
彼はフと視線を彷徨わせてから、諦めたように口を開いた。
「先生にそっくりの女を見た…顔がじゃねェ。雰囲気とか仕草とか、全てがあの人に似てた…」
嚙みしめるように吐き出された言葉に桂は首をひねる。
他人の空似も無論あり得はするが、この男に限ってそんなことはあるまい。
「本当にあの人と、何か関係があるのか…」
失くしてしまった大切な人。
彼と血の繋がりのある者がいるとしたら…
「……あちらはこっちに気付くはずもない。黙って素知らぬ顔で接すれば良いではないか」
自分達のことを恨むだろうか。
あの人を返せと、責め立てられるだろうか。
「お前の性分ではそうもいかぬまい。だが、それが得策だ」
ほぅと肩の力を抜いた桂がコップを机に置く。
「あぁ…そうするよ」
銀時も頬を少し緩ませた。
そして思う。
持つべきものは背中を預け、戦地を共にくぐり抜けてきた戦友だと。
そして浮かぶ。
ここにもう1人、誰かいなかったか、と。
可憐に儚く笑う少女が居やしなかったか、と。
……いや、いるはずもない。
自分が生きていたのは戦場なのだ。
女がいるわけがない。
思考回路を遮断する為、銀時は桂が注いだ酒を一気に飲み干した。
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いぬ(プロフ) - 大好きです!いや、もう本当に好きです。日向ちゃんの性格が可愛すぎるっ!これからも頑張って下さい! (2020年12月17日 6時) (レス) id: daed22b7fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:吉良 x他1人 | 作成日時:2015年1月9日 18時