能面 その仂 ページ6
琥珀「何ですか?」
翡翠「こっち、こっち。」
先輩が、指差す方を視ると割れた面が落ちていた。よく見ると歪んだ笑顔を浮かべた翁の面に似ていた。僕の目にそれは禍々しく映り黒い靄のようなものが微かに見えた。それは後で、オーラだと先輩に教えられた。
琥珀「何ですか?その気持ち悪い割れた面は?」
翡翠「……おそらく呪具の類いなんじゃないかと思う。」
琥珀「呪具って、人を呪うための?何で、こんなところに……。」
予想なのだが、もしかしたら能面がやったのかと思った。おそらくその二つの能面の力によって無理矢理にでも寮の中から追い出されたあげく、二度と入ってこられないように粉々にされたと今考えても少し恥ずかしいであろう予想をたて、先輩に話してみた。すると、先輩から「……ククク。」と苦笑にも似た笑いをされて、ムッとした。
琥珀「何が可笑しいんです?」
翡翠「いや、悪い。でもね、ククク、ハハッ。なるほどね、能面の力によって壊れた、か。ハハハ。」
琥珀「?」
翡翠「そうだね。能面の力で寮の外にやられたのは、間違ってないと思うよ。でも、壊れたのは、能面のせいじゃない。」
琥珀「どういうことですか?」
翡翠「明後日の朝刊が楽しみだな。」
笑いながら、先輩は寮の玄関の外に夜なのに対して暗くそして真っ黒な影を落とした。いつも思うことだが、その影を落とすたび、背筋がゾクゾクっとすることがよくあったのだが、何故かは分からないし、師である先輩に訪ねることもしなかった。聞いてしまったら、答えを知ってしまったのなら、もう戻ってこられないような、帰ってこられないような、そんな気がしたから。…二日後、学校近くのアパートに二十歳男性の不振死があったことが、朝刊に載せられていた。なんでも、顔面の骨を強い圧力をかけたような感じに粉々に粉砕しており、散らばった骨が脳を貫いていたらしい。その事を日が傾き夕方が闇を落としてきた時刻に事務所のの机を挟んでその事を話すと、ニヤニヤしながら、こう言った。
翡翠「ほら、俺の予想通り。術者は死んだ。」
琥珀「先輩は、何でその人が術者って知ってるんですか?その人が亡くなったのは返しの風にかかってたからですか?」
翡翠「また少し違うね。確かに俺は、亡くなった術者を知ってるよ。たまたま、事務所前を通りかかったサラリーマンだ。何かね、黒いオーラが見えたから、あれかなと思っただけだよ。でも、呪い返しが原因じゃない。呪いの反動のせいだよ。」
2人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:水神 竜聖 | 作成日時:2017年7月4日 21時