美術室の爆弾魔【宇髄天元】

第28話 先生の絵 ページ29

放課後の美術室。窓際の椅子に座って、なんとなく夕日を見ていた。



宇「生徒、ちょっとそのまま動くなよ。」


夢「え、急になに？」




先生の手には、スケッチブックと鉛筆が持たれていた。






宇「今、いい絵が描けそうなんだ。さっきの体制で夕日見ててくれ。」


指示通りに、傾き始めた夕日を眺めた。





静かな美術室に鉛筆を走らせる音が細く響き始めた。




宇「…生徒、やっぱお前、派手に綺麗だな。」


夢「っへ？」




ビックリして、先生のほうを向いてしまった。




宇「いや、動くなって。お前やっぱ可愛い。」



夢「急に言われたら照れるじゃん。てか、口は動かしていいの？」



宇「腹話術できるならできればそれで。そういう照れる所も可愛い。」



夢「腹話術はみにつけてないな、、、さっきから
嬉しいこと連発してくれるね。」




宇「俺が惚れた女だぞ。派手に可愛いに決まってる。」





私には恥ずかしいことを言ってるようにしか思えないけど、先生は何事もないかのように、鉛筆を滑らせる。


私は、恥ずかしくなって「ふーん。」と、短い返事だけ返した。



また静まり始めた美術室に、鉛筆を走らせる音が響いた。








宇「…できた。」






夕日が沈みかけた頃。先生の嬉しそうな声が聞こえた。





夢「…わっ、、きれい。」






鉛筆だけで描かれたはずの絵には、夕日があたたかな光を放っているように見えた。




そして、窓際で夕日を見ている私が、あたたかな夕日に包まれている、優しい絵だった。






それ以上に、先生にはこんなふうにうつっていたのか、と感覚を共有した気さえした。





それと、横目で見た絵を描く先生の真剣な、まっすぐな表情が、私の頭の中から離れない。






鼓動がはやくなって、私の頬は夕日と同じように
赤く、ほんのり熱を帯びているだろう。





いつもは、芸術は爆発だ、なんておかしなことを言ってダイナマイトに火をつける変人だ。







だけど、絵を描いているときは




いつもより少しだけ、言葉がまっすぐに




気持ちを素直に伝えてくることがわかった。

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