敗者 ページ40
太宰side
敦君がAちゃんを救いに走った其の日、私は独りで酒場に向かった。もうあの娘は完璧に敦君のもので、私に介入する余地は無い。少々感傷的な気分になりたかった。
・・・のだけれど。
「・・・何で君が此処に居るのさ」
妙に低い処に在る黒帽子が、吐き捨てた私の方を向いた。
「はァ!?何で手前・・・ストーキングか!?」
「誰が帽子置場のストーキングなんて物好きな事するのさ」
私は空いている席を探したが、何の因果か此の小男の隣席以外に、空席は無いらしかった。
かといって此奴の為に態々違う酒場を探すのも癪な話。私は、席を中也から数米離し、腰掛けた。
「何で隣に座るんだよ!」
「此処以外に空いてる席が無いのだよ、相変わらず頭が足りないねぇ・・・」
「んだと!?」と立ち上がりかけた中也だが、ふと首を傾げた。
「如何したの、遂に日本語が判らなくなったのかい?お目出とう」
「違えよ莫ァ迦。ただ、何か今日手前のうざったらしいテンションが低い気がしてよ」
私はうんざりと溜め息を着く。「其れは君に遇ったからって意味?」
「否、そうでなくても一寸おかしい。また自 殺に失敗でもしたのか、放浪者?」
「確かに其れもあるけど・・・」
思わず云って仕舞い、愕然とする。こんな蛞蝓に本音を云って仕舞うとは、私とした事が・・・
「・・・否、私の事は別に善いだろう。其れより君も、何時もの不遜な顔つきから一転、随分神妙な顔をしているね。又背が縮んで居たのかい?」
はぐらかすと、「縮んでねえし、俺だって悩み位あるわ」と文句を云われた。
「好きな娘に振られたりとか?」
半分巫山戯て、半分自虐の真似事で云ったのだが、中也は「何で知って・・・!」と口走った。
・・・真逆の図星。
私が流石に驚いて中也を見ていると、「・・・あああ!今のは無しだ無し!」と中也は漸く気付いた様子で叫んだ。
「・・・つーか、そういう手前の方こそ女に振られたんじゃねえか?」
明らかに苦し紛れと判る発言だが、勝手に頬が熱くなるのを感じた。・・・蛞蝓にしては冴えてる、図星だ。
「マジかよ」と中也が笑った。私は其の雰囲気に耐えきれず酒を一杯頼んだ。飲んで仕舞えば、顔の火照りは酔いのせいに出来る。
如何やら、悪夢の様な夜は暫く続くらしかった。
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☆天香☆ - 蟹江さん» ええええええっ!?(歓喜)蟹江様の作品大好きでいつもいつも笑わせて頂いて居るので、まさかそんな蟹江様が僕の小説を読んで下さるとは思わず、超嬉しいです!語彙力の塊ってそれは貴方様では・・・!?本当に嬉しいです、有難う御座います!更新頑張ります! (2019年11月3日 11時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
蟹江(プロフ) - 貴方様の小説が読みたくて、探してみました(気持ち悪いことして本当にすみません)文才?って云うんですかね語彙力の塊ですね…!?他では見ないような素敵な作品だと思います!更新頑張ってください! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - アイさん» こんにちは、コメント有難う御座います!ある意味で思い切りとノリのいい夢主ですよねw万人受けするものを面白く書けない質ですので、新鮮で面白いと言って頂き光栄です!更新頑張ります! (2019年10月20日 20時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
アイ - どうもー、天香さんの参加しているイベントの主催者のアイです!まさか、夢主ちゃんが本当に太宰と心中してしまうなんて・・・驚きです!あまりこのような作品は見ないので、新鮮でしたが、とても面白かったです!これからも頑張って! (2019年10月20日 17時) (レス) id: 2d5f8eb3ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2019年10月3日 14時