家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています……!?

死んだふり 10 ページ10

ドアが開いた。


妻が可愛い悲鳴を上げる。
その瞬間、僕は妻を引き寄せる。








「すまなかった。愛してる」









自分から絶対に言えなかった言葉。



少しでもあの頃に戻れたら。









「私も……愛してるよ」








ぎゅっとしてくる妻。

唇を重ね合わせて
抱き締める。









「…………私がね死んだふりを始めたのはね」









妻がウォークマンを取り出す。









『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。――――……』









まるで僕らのような歌だった。


妻は
「私も死んだふりをすれば、あの頃に戻れるかなって」
泣き出した。









「すまなかった」









妻の頬に血糊を塗る。








「愛してる」








微笑むと妻は俯いて 何か言いたそうだ。









「愛してるよ……ヒカル」









母子手帳を持った妻。
僕はもう一度妻を抱きしめた。

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