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部活が始まってから、藤巻は体育館の隅で小さくなって練習を眺めていた
俺はというと、先程の鈴野さんの言葉がずっと頭の中をぐるぐると回っていて、大会間近だというのに練習に集中できないでいる
「あいつ……また上の空だ」
「恋煩いだと」
「まじか……」
「たかのたかの!あれ有村じゃね!?」
「有村?」
吉田の指差す方向を見ると、確かに有村らしき小柄な生徒が上のギャラリーからこちらを眺めている
「おお、ほんとだ」
「かっわい〜」
有村は俺たちに気づくと、胸の前で小さく手を振った。それからちょいちょいと手招きをするので、持っていたスポドリを一口だけ飲んで小走りで近くに駆け寄る
「どうした?」
「ふふ、いやぁ別に……転校生、ぜんぜんヤンキーじゃなかったね」
有村はそう言って、悪戯っぽい笑みを浮かべこちらを見下ろした
俺がとっくに忘れていた"掛け"の内容を、彼は執念深くも覚えていた。侮れない男だ
「お前……わざわざそれ言うために」
「ジュース、ちゃんと奢ってね」
人は見た目によらないと失礼なことを考えつつも、まあジュース1本くらいどうってことないと素直に頷く
「あー、はいはい。じゃあ明日買ってやるから」
「だめ、今日俺高野が練習終わるまで待ってるから。一緒に帰ろ?」
「はぁ?だって終わるの8時とかだぞ?」
まさかの提案に、思わず素っ頓狂な声を上げる
「待ってるよ、いいでしょ?」
その有無を言わさぬ物言いに断ることもできず、結局この日は有村と一緒に下校することになった
帰りの仕度を終え、トモと吉田の3人で外に出ると先に待っていた有村がぴょこぴょこと飛び跳ねながら近づいてきた。俺の左腕に自分の両腕を絡ませ、かなり満足気だ
「練習終わった?」
「うん、ごめん。待たせて」
「ううん、俺がAのこと待ちたかっただけだから」
100点の返しをする有村に、世の男たちはこうして騙されていくのかなぁなんて、どうでもいいことを考えた
「(てか、ナチュラルに名前呼び……)」
「あれ、今日お前有村と帰るの?」
「いや、4人一緒に……」
「うんそうなの。ごめんね吉田くん」
否定しようとするのを横から遮られ思わず有村を見ると、なんとも可愛らしい笑顔で「ねぇA?」なんて言うから、ぎこちなく肯定の言葉を吐くしかなかった
……なんか、既に手玉に取られてる気がしないでもないんだが
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山桜桃(プロフ) - 完結おめです!読み終わりましたーこれから他のBL作品巡回してきます┌(┌^o^)┐ホモォ、、、() (2020年4月28日 6時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
山桜桃(プロフ) - ご、、ごめんなさい!下の人がコメントしたので通知が来て「暇だから読んでみっか」と思って読み始めたら、、エグいです、、、可愛すぎて無理、、、「萌えます」の一言で終わらしちゃダメなやつ!!!!あっ私、下のカラ松ガールです。本当に読む手が止まりません! (2020年4月28日 5時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 萌えますねぇ。ちょっと逝って来ます、どこに?それ聞きます?? (2020年4月28日 2時) (レス) id: cfb86d3e94 (このIDを非表示/違反報告)
なんじゃらほいほい(プロフ) - カラ松ガールさん» まじですか……嬉しい (2019年12月1日 4時) (レス) id: 8999d0f4f9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 萌えます (2019年11月28日 0時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なんじゃらほいほい | 作成日時:2018年4月5日 11時