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お昼休みが終わり、次の講義の教室に移動する。
少しお昼が遅くなってしまった私達は席取りに出遅れた訳で。
「あちゃ〜次の婆さん俺寝るんだけどなあ…」
いつもは後ろの端っこを陣取ってぐーすか寝ている宇髄。今日はそういう訳にも行かず、見たところ真ん中のちょうど2席、あそこしか空いていないようだ。
だがしかし、そこで私はピタリと止まる。
「…………やだ」
「あ?あー……これはしゃーねーって。大丈夫、なんもねーから。A行くぞ」
あの2席の真後ろにあの男が座っている。
察した宇髄が顔を顰めるが、仕方ないと言って私をずるずる引っ張っていく。先程とは形勢逆転である。
どんどん近くなっていくあいつとの距離。
そんな私達に向こうも気付いてしまった。
「…………、」
じっ、と見られる。
あの、黒い眼に見られるのが嫌だ。
とうとう真ん前まで来たとこで宇髄の袖をぎゅぅと握る。無言の圧力をかける。
コソリと宇髄は、「俺が真ん前座るからお前は斜め前にしとけ、それでいいだろ?な?」と気を利かせてくれた。
こくりと頷くと、何も無かったかのように私はそこの席に座る。大丈夫、ここは私と宇髄だけ。私と宇髄だけ。そう言い聞かせる。後ろには何も無い。
心を無にしている私の隣で、宇髄は後ろの男と普通に話している。
これは仕方のないこと、宇髄にとっては友達。私には無関係。
【無関係】。
こうして私達の講義は始まった。
授業が始まれば、静かで気にする心配も無くなる。この講義のお婆さん教授は授業中の私語に厳しく、注意されるので誰も話したりしない。退屈してる人は寝てるかこっそりスマホゲームしてるかのどちらかだ。
私はといえば、成績はいい方なので真面目に必要なとこのメモを取り、あとは大概ぼーっとしている。
コツン、頭に何か落ちる。
「………っ、わり」
振り向けば、少し焦り顔のあの男。
視線の先には手元に落ちてきた消しゴム。頭に直撃したのはこれか。
迷った挙句、授業中なので消しゴムが無ければ困るだろうという判断の元、無言で手渡してやった。顔は、見ない。手だけで後ろに。
手元の消しゴムが消えたので無事渡ったようだ。
(────────っはあッ、…………死ぬかと思った)
動機のような息苦しさ。
緊張、した。
消しゴム一つ渡すだけで、この有様。
ほんと、
(やっぱり、駄目だ)
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ふぐひらめ - はぁああぁ……最高……(溢れ出る幸せ) (2021年12月5日 22時) (レス) @page21 id: f76242864c (このIDを非表示/違反報告)
星空 - 続きが気になる!更新頑張って下さい! (2021年3月5日 8時) (レス) id: 8e029f144e (このIDを非表示/違反報告)
あゆゆ - ぎゃぁぁぁぁっっ!!え、死ぬんだけど笑笑実弥が一番好きなのでもう心臓もげそう笑続きめちゃ気になるー!!更新頑張って下さい! (2020年11月28日 1時) (レス) id: b8364d44bb (このIDを非表示/違反報告)
氷雨(プロフ) - 花さん» 小鳥ちゃんの愛称で呼んで頂けて嬉しいです…!ツンデレ小動物小鳥ちゃんこれからも宜しくお願いします! (2020年11月20日 22時) (レス) id: d7b92a39ba (このIDを非表示/違反報告)
氷雨(プロフ) - おはぎとだんごさん» 嬉しいです…(号泣) (2020年11月20日 22時) (レス) id: d7b92a39ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷雨 | 作成日時:2020年11月10日 13時