▲18文字目 ページ20
.
予想とは大幅に違う反応だった。
『私は…!き、』
「き」そう聞こえた瞬間、やっぱり駄目かと悟った。そう思っていたのに、目の前のAは顔を歪めて、ポタポタ涙を溢していたのだ。
それを見た途端、いても立ってもいられなくてAの気持ちなんかおかまないなしに抱き寄せてしまった。
なんで、お前が泣くんだよ。
ここ何年も縮まることの無かった距離。
腕の中に収まる小さな幼馴染は、か弱く、変わることのない柔軟剤の匂いと、温かな体温。俺が成長したせいか、また一段と華奢に感じて力を入れ過ぎれば潰れてしまいそうだった。
俺にとっては、何年経っても守らなきゃいけない"女の子"なんだ。
「しなずがわ……」
苦しい、とAは言う。
それでも俺のことは頑なに不死川、と呼ぼうとするんだ。
触れてみれば、Aが俺を本気で拒んでいた訳じゃない事が分かってしまった。
だから、俺は諦めきれないのだ。
この女は、どこまでも狡い。
こんなにも振り回しておいて。何年拗らせてると思ってんだ、馬鹿が。
分かんないなんて言うな、はっきり嫌いって言っちまえば良かったのに。
こいつは、昔から甘ちゃんだ。
「A」
「なに、」
「実弥って言え」
「………嫌」
「不死川なんて言うな、お前からそう呼ばれるのは気持ち悪りィ。落ち着かねェんだ」
「………知らない」
落ち着いたAは、しっかりと俺を見据えて言葉を発した。
「いつまでたっても、ただのAと実弥じゃ要られないんだよ…」
その言葉の意味は分からなかった。
「ぐずぐずといつまでも幼馴染が続けられる訳じゃない。私達は、男と女なの。……分かるでしょ」
分かって、と言わんばかりに突き放そうとする。
「分かんねェな」
「!っ……このままじゃ、要られないの!」
「それが、分かんねえって言ってんだァ」
じゃあなんで、はっきりさっき答えなかった。俺はチャンスをお前にあげただろ。歯切れの悪い態度を取ってんのはどっちだ。
お前が望んでんのは、何なんだ。
それが"分かんねェ"んだよ。
「嫌いになりたくないの……っ…」
「じゃあならなきゃいい」
「でも、一緒にいると傷つくの…。いっぱい、いっぱい。傷つく事ばっかなの…辛いの…!」
「俺が護ってやんよ」
「そうしてくれなかったのは誰………?」
「…………は?」
突然、頭が冷えた。
もう、遅いよ。とAは言った。
855人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふぐひらめ - はぁああぁ……最高……(溢れ出る幸せ) (2021年12月5日 22時) (レス) @page21 id: f76242864c (このIDを非表示/違反報告)
星空 - 続きが気になる!更新頑張って下さい! (2021年3月5日 8時) (レス) id: 8e029f144e (このIDを非表示/違反報告)
あゆゆ - ぎゃぁぁぁぁっっ!!え、死ぬんだけど笑笑実弥が一番好きなのでもう心臓もげそう笑続きめちゃ気になるー!!更新頑張って下さい! (2020年11月28日 1時) (レス) id: b8364d44bb (このIDを非表示/違反報告)
氷雨(プロフ) - 花さん» 小鳥ちゃんの愛称で呼んで頂けて嬉しいです…!ツンデレ小動物小鳥ちゃんこれからも宜しくお願いします! (2020年11月20日 22時) (レス) id: d7b92a39ba (このIDを非表示/違反報告)
氷雨(プロフ) - おはぎとだんごさん» 嬉しいです…(号泣) (2020年11月20日 22時) (レス) id: d7b92a39ba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:氷雨 | 作成日時:2020年11月10日 13時