【ＢＬ】落ちてるスマホは拾わないこと！

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「ただいまー……」


玄関先で靴を脱ぎながら言うが、玄関に自分の声が響くだけで誰も返事をしてくれない。

これがサラリーマンの気持ちか。
などと考えていると、ミシミシと廊下を歩く音が聞こえる。

部屋から出てきたのは俺の母。
元気そうな笑顔を見せているが、俺の母は仕事帰りで多分疲れているだろう。


「おかえり、A」

「……寝てなよ」


母さんの“おかえり”という言葉があるお陰で、俺も毎日バイト頑張れてる気がする。

そんな母さんにはゆっくり休んで欲しいという意味を込めて、“寝てなよ”と言った。


「Aの顔が見たかったのよ」


悲しそうに笑う母。

俺が家にいる時間は寝る時ぐらいしかない、それ以外は学校やバイト先にいる。
だから寂しいと言っているんだろう。


「うん、でも寝てたほうがいいから」

「そうね……おやすみ」


小さく丸まった母の後ろ姿はなぜか虚しくなった。


さて、俺も寝るか……という時に尻に何か違和感がある。
まさかとは思うがあのスマホでは？なんてことが頭に浮かぶ。

尻ポケットに手を突っ込むと予想通りスマホが合った。
俺のスマホではなく、電車で捨てたスマホだ。

スマホから手を離すとスマホが床に落ちる、
床に落ちたスマホから廊下に目を移すとそこには俺の家の廊下ではない、町の商店街になっていた。

電車では気味の悪い声が聞こえて来たが、これは予想外だ……。

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