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自分専用の部屋に案内された。
最低限必要なものは置いてあるといわれた。
ベットや本棚や机と、様々なものが揃っている。しかも、風呂トイレ付き。
でも時々気になるのは、僕がくる前に誰か住んでいそうな雰囲気。
書き途中のメモ帳の様なものや、クローゼットの中には家政婦のような作業のしやすい服がある。
もしかしたら僕以外にも家事専用の人形がいたのかもしれない。
「A、どうかした?」
平然と聞いてくる主人に対し、首を横に振る。
「じゃあ俺は部屋にいるから、夜ご飯になったら呼ぶよ」
そう言い、部屋を出て行った。
一人になった瞬間、ベットに飛び込んだ。そして枕に顔を埋める。
今気付いたけど、僕は寂しがり屋なのかもしれない。
前の主人は仕事をしていたけど、家での仕事でずっと一緒にいた。
適度に会話もしてたし、本などもくれた。
「本……」
そういえば、本棚があるんだったと思い出して本棚に向かう。
本棚には日本国の言葉なのか、僕の母国の言葉ではない言葉がツラツラと書いてある日記本。
どうにかして読めないかな。
すると部屋の中にノック音が響き、扉が開いた。
「おい、優。またそこに……いた……のか?」
そこには優と同じ容姿をした人間が立っていた。
“おい、優”と言っているのを見ると、主人の知り合いだろう。
主人の知り合いは何も喋らず、動かなくなってしまった。
「帰ってきたのか?
____本当にA、なのか?」
彼の顔を見ると大粒の涙を流している。そして、焦りながら僕に駆け寄ってくる。
僕の名前を知っているという事は、
僕のことを言っているんだと思い小さく頷いた。
「やっと……やっとだ」
僕の腕を掴みながら、しゃがみ込んでいる。僕はどこにもいかないのに。
そして、声を殺して泣いてる彼は泣いている所を僕に見られたくないのだとわかった。
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