14・素敵な夢 ページ15
体調も良くなりすっかり元気になった私は、夜遅くになっても寝付けずにいた。
隣でむにゃむにゃ寝言を言っている、今日助けてくれたポケモンの寝顔はひどく穏やかで。
その穏やかすぎる寝顔が、私を不安にさせた。
やはり私は、本当にポケモンになっているようだ。
その事実を私はまだ飲み込めずにいた。分かっているのに分かっていない、気持ちの悪い感じが全身をぐるぐる回っている。
真っ白の毛が月光を受けて艶やかに光り、足に生えた爪は触れたもの全てを傷つけてしまいそうなくらい
鋭かった。
「私、どうしてここに来たんだろう…」
ここに自分がいる理由を、私は知らない。もしかしたら知っているのかもしれないけれど、今の私には全く分からない。
めーちゃんの最期の言葉は、もしかしてこの事、私がこの世界に来た目的についてだったのだろうか。
窓から覗く眩しい三日月があんまり綺麗で、私は時間も忘れ息を詰めて見とれていた。
『眠れないの？』
起こしてしまったのだろうか。ムクリと起き上がった彼は、大きな欠伸を1つした。
「起こしちゃった？」
『…月が眩しくて、なんか起きちゃっただけだよ。』
『僕、あの夜空の一部になりたいんだ。』
「夜空の一部？｣
ゆっくりした語り口は優しくて、私はその声に耳を傾けた。
『星は、一つ一つが大昔からずーっと輝いていてそれが未来を照らしている。
月は、見ているだけで心が穏やかになるし、暗い道を照らしてくれる。
僕もそんな風に、誰かの未来や暗い道を照らせたらなって。』
窓越しに夜空へ両手を伸ばし、空高く輝く月を真っ直ぐに見つめていた。
「素敵だと思う、そういうの。」
口をついて出たのは、紛れもなく私自身の本音だった。
『本当にそう思う？』
「え、うん。」
聞き返されたのが少し気恥ずかしくて、私は短く返事をした。
『そんな風に言われたの初めてだ。今までずっと、変だって言われていたから。
ありがとう、えーっと…』
悩む素振りを見せる彼に、私はようやくお互いに名前を名乗っていないことに気がついた。
「私はアブソル。名前、すっかり言い忘れてた」
『そっか、ありがとうアブソル！僕はリオル。よろしくね』
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